LEAF 0032 / 2005-04-17
ざんくろー (1/119)
追いかけて
追いかけて花冷え本気で喧嘩する
119 leaves
追いかけて花冷え本気で喧嘩する
まんさくのぶらりしゃらりや太陽系
海底の錨につなぐ恋結び
初恋は手もつなげずに花の昼
春の虹キミの心の覚書
胎動の片目を覚ぼゆ万華鏡
息継ぎ忘れ蒲公英の絮吹きにけり
焼き付ける罪悪感の花林檎
直隠せ叶わぬ恋のリラの花
春暁のすすり泣きあとピサの斜塔
春眠し拙き理由探す朝
和太鼓の波紋を拾う雪柳
夜勤行く父の背中は水墨画
意味深を含ませいきなりチョコレート
チョコレート一語一句に苦味なし
君が吐く言葉は桃の花が白
囀りの果敢な誘い無我夢中
楽しいから脳圧上がり絞る知恵
額の花釣れたあなたは美人局
ベゴニアのひと際高い笑い声
人間のフリして生きる疲労感
人間は進化ではなく退化した
泣き言は小夜枕ですら儘ならぬ
得意気にキミをあしらう青柳
永久に逢ふ意地悪も亦一番茶
リーマンの希望脱ぎ捨て四月尽
幼馴染が還っては鯉幟
微笑みの澄む素顔には花水木
甲高い色を出してる五月晴
空胸の朝が辛くて二度寝する
安息の押入れにおる夕蝙蝠
はつなつや古川緑波の声帯模写
先生の嘘は優しさ気がつけば
錯雑の鍋を言霊こだまする
冒険の始まりはアカシアの花
花辛夷ことのは詰めて咲にけり
初夏に鼻面終に受け入れる
効かないのに塗り続けているオロナイン
二十二時いつも通りに渇く夜
梅雨入りの夜が添わりつつヘ音記号
雨しとしと人と逢うならメヌエット
アレグロの休日過ごす黄水仙
手にうける雨は雨のドラマある
人間のしずくが匂うところ好き
青雲に自分がにじむ夏時間
流る砂時計の速さ緋の牡丹
綾取りをほどくように許すキミ
綾取りが絡まるように赦さぬキミ
言いなりに勝つまで続くオセロの夜
降伏は幸福の鍵日永かな
この思い形にかえて息白し
石畳楽器になりぬ春驟雨
花海棠唄う魚の主旋律
見放つや離婚届けも葱坊主
海月とは三日前に別れました。
常磐木落葉今日は一人にしやしない
参観日並べに並ぶパステル画
落日の吸い込む空に鯉のぼり
四六時中青息吐息労働歌
迷子がおるさやえんどうの中心点
ありがとう行く春に手をみなが振る
ぎぼうしの夢の中まで覗きおり
今朝の夏過去の塞がる広辞苑
投げキッス四肢広げおる日回り草
生娘のフリしてバナナむいておる
姫街道猪武者が駆けて行く
爛漫の朝顔双葉竦みたり
初夏の陽の音をうべなう付け睫毛
臍の緒と薄暑をつなぐ呱々の声
隕石を温めてみる走り知恵
先まぐるひとりの夜の月明り
葉桜の音やきぬぎぬなる土曜
あんぱんの尻から齧るケムール人
聖五月母と探した靴飛ばし
夏に入る眠たいビルが立ち並ぶ
猫舌の余り茶にする一番茶
作戦はトラトラトラ!とバーミヤン
寝映画の流れる字幕お花畑
合歓の花眠れぬ夜の円周率
ふくよかな唇に這う高楊枝
塩梅を勘違いした初夏が来た
新じゃがの不安を掘ってあげました
失敗を剥いてキャベツの美しく
河口堰ざらりと咲いた夏の川
字余りの外交や青唐辛子
芍薬や月曜の夜はひとりきり
午後の雨傘になりたいあの人の
初夏過ぎても艶書のやうにやりとりす(*/∇\*)
風薫るまぶたに残るほの明り
遮断機の警笛にごす今日の音
飽かず空見上げる泰山木の花
伴奏の街路樹よせる白木蓮
さくらんぼ種を蒔いては略奪す
くびにあるシャンプーハットゆすらうめ
梔子の香や海馬から幼稚園
青梅の頃かPSY・S口ずさむ
双子座の男がおちいる夏隣
鳥かごの我鳥ががなるほととぎす
グラジオラスまだ見ぬ明日の生き心地
1.7320508額の花に問ふ
白シャツが大人に見えた衣更え
指折りの女心やアマリリス
キャベツ剥くあなたの前ではぬいぐるみ
宇宙の背のあざのひとつか色の鯉
我先にノードの海へ縞蚯蚓
聞き耳を立ててる猫に話しかける
額の花ゴトゴト回る脱水機
阿蘇山の五色刷りかな青嵐
じゃんけんのかけごえにグー梅雨出水
言ふ言わぬ水かけ論や青紫陽花
傘塚の事務所にひとつまた傘が
アボガドロ定数よぎる梅雨の夜
押入れのミシンを出して恋破れ
片言のアマリリス咲く赤い糸
脈と脈ぶつかりあいてあめんぼう
待罪の大麦畑風が吹く
鼻づまる先に広がる梅雨の空
雑巾縫ふ母の背筋や青葡萄
花壇から始まる梅雨の純文学