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ゴール全体に公開
2008年08月15日01:13
以前、バレーボールの三屋裕子さんと某雑誌上でお会いしたとき、「目標設定」をめぐって印象的なやりとりをした。こんな話だった。

M:アートを何人もでやるときに、勝つっていうことがあるのか。
A:それはある。ただ、勝つことを目標にはしない。
M:アートの目標って、なに?
A:目標はもたない。最初にぼんやりと完成のイメージは持つが、たいてい達成しない。
M:よりよい作品を作るとか、評価されるとか、そういう目標設定はないのか。
A:なにが「よりよい」かわからないから、目標がわかりたくて、手をうごかす。
M:私はずっと、目標に向かってまっすぐ進むことしか考えてこなかった。
A:僕は、途中で軌道が折れ曲がることに、喜びを感じる。
M:そういう生き方は、理解できない。
A:何年も直線で生きるのは、無理。

ほかにも、模倣は利き手で独創は逆がいいとか、電話はエロいとか、コンピュータが道具ならボールって道具?とか、天才はイチローしかいないとか、三屋さんは素で話が深まるタイプの人で、胸のすくロングラリーだったのだけれど、そのときの雑誌を探し出してみたら、短くまとめてあって面白いところはほぼ落ちている。

テレビでアスリートを見ながら、三屋さんのことを思い出した。かえずがえす自分は、目標、闘争、上達、勝つ、といったキーワードと無縁に、無軌道に生きてきたなあと思う。そういうことに熱くなれない。しかし「人類を超えたい」という思いは、たぶん彼らと共通している。

北島が泳ぐ手の先に、CG合成の緑色の線が世界記録の速さで移動していたけれど、自分にとってあの線はなんだろう。どうやったら、可視化できるのだろう。

コメント

godzi22008年08月15日 01:58
「競争」とか「闘争」とかと無縁の映像を作りたい。
ドラマトゥルギーとかいうものの底には対立構造があるようなんだけど、そんなもんから折れ曲がった方向めざして進んでみたいものだと。
安斎利洋2008年08月15日 02:16
この前BSで、黒澤明のドキュメントをずっとやってましたが、
現世的な駆引きと無縁に見える映画づくりを、ものすごく現世的な駆引きにまみれてやってるところが、面白かった。映画は興行だから、当然なんだけど。

山賊をきわめましょう。
てらだくん2008年08月15日 02:50
本題とは違いますが,
あの競泳のときにでる線,私はあまり好きではないですね.
あそこでは何位になるかが重要だと思うので.見る人の観点を固定するような演出はどうかなーと.
smi2008年08月15日 06:37
>北島が泳ぐ手の先に、CG合成の緑色の線が世界記録の速さで移動していたけれど
あれはCG合成じゃないと見た。
中村理恵子2008年08月15日 09:55


>目標、闘争、上達、勝つ、といったキーワードと無縁に、

あら、あたしは最近、闘争心とか、勝つ負けるってことに縁づいてきました(笑)。
古武道ね。
(そこで、なんでも最近古武道じゃん・・という顔をしない>安斎さん)

しかし、印象的だったのは、負けてがっかりする、泣く、こざっぱり微笑む選手達はどーでもよくて。

むしろ勝者たちのセレモニー終わって少し経ってからの表情に、ちょっと驚いてます。
とても、”寂しそう”だ。
特に、北島康介がみせた一瞬の表情。

>目標に向かってまっすぐ進むことしか考えてこなかった。

これがすべて達成されたとき、どういった心持、どういった表情をすれば適切なのか?
敗者たちよりも、いっそう”さびしい”そうだと思ったんです。

安斎利洋2008年08月15日 10:09
>あそこでは何位になるかが重要だと思うので.見る人の観点を固定するような演出はどうかなーと.

競泳は、本来あの場に並んだパラレルな戦いなんだけれど、特に昨日の北島のレースは記録とシリアルに向かい合った個人競技でしたね。

>あれはCG合成じゃないと見た。

解説して!
安斎利洋2008年08月15日 10:23
>とても、”寂しそう”だ。

突然、定年退職がやってくるようなもんかな。
夏草やつわものどもが夢のあと
中村理恵子2008年08月15日 10:30

>突然、定年退職がやってくるようなもんかな。

いや、もっと”底知れぬ”何か?
勝者じゃないとわからないのだと思う。
もっと非凡な、行き止まりか?

安斎利洋2008年08月15日 11:18
>もっと非凡な、行き止まりか

直線は、端点で区切るしかないからね。

「人は死なない」(荒川修作)
smi2008年08月15日 11:32
>>あれはCG合成じゃないと見た。

>解説して!
たぶん、みどりの紐!
それか、北島がCGとか。
安斎利洋2008年08月15日 11:47
>それか、北島がCGとか。

4年後のオリンピックの200m平泳ぎ決勝で、緑の線のかわりに北島のCGを合成する、っていうのは現実的にありえますね。
開会式の足あとCGは、オリンピックAR時代を、暗示したのかも。
Mike2008年08月15日 18:11
相手が直接見えて戦っている人と、自分自身とか見えない State of Art を相手に戦っている人との対談メモは面白いですね。もっと、続きが知りたい。(たとえば、電話はエロいの対極にあるものとか)

PS: オリンピックなどでのAR的な補助は、見る側がオンオフを選べるようにして欲しいですね。ちょうど字幕のように。
miyako/玉簾2008年08月15日 18:38
トライアスロンのオリンピック選手のボランティア通訳をした時、彼等とあま
りにも感覚が遠く、不向きだと思って最終的に辞退。

失敗すれば、ナイキやニューバランスなどetc..のスポンサーから切られ、翌年
の出場資金が無くなる選手もいたりして、レース前の彼等は凄い気迫。

>目標、闘争、上達、勝つ,
ある仕事でどうしてもやらなければならず、これらを達成した事が一度だけあ
ります。結局、勝って目標達成とともに倒れて入院。合うわけない事を無理し
たダメイジは大。

やりたい事に向けて進むのみ。どうなるかは不明です。
一つはっきりしている目標は「死ぬまで元気に生きること」ぐらいかな(笑
安斎利洋2008年08月15日 19:08
>自分自身とか見えない State of Art を相手に戦っている人

Mikeさん、さすが凝った言い回しですね。State of Art of the Art というような。

>たとえば、電話はエロいの対極にあるもの

特に対極はないんですが、片方の耳元で声がするって、エロいよね、みたいな話でもりあがれる三屋さんは、すてきでした。

>AR的な補助は、見る側がオンオフを選べるようにして欲しい

4年後にむけて、案外いけるアイデアかもしれませんよ。どこかに売り込んでみては?
安斎利洋2008年08月15日 19:12
>一つはっきりしている目標は「死ぬまで元気に生きること」

こういう「点」でない「線的」な目標設定は、僕も好きです。「このように生きよう」、という目標をいくつももっているのですが、今ひとつも思い出せません。
びすけっと2008年08月16日 03:26
>AR的な補助は、見る側がオンオフを選べるようにして欲しい

面白いですね.
一般化すると,ワイドショーのやらせのオンオフとか.元ネタに
どれだけすぐにアクセスできるか,って話ですかね.

マラソン選手だと,ペースメーカのARが欲しいかも.
びすけっと2008年08月16日 03:34
フェンシングの太田選手が,ニートと書かれてましたけど,似てませんか?
お金より,フェンシングに強くなることを目指しているあたり.
文句なしに強くなっちゃえば,お金はついてくる.

逆に,それをアートと呼ぶかどうかは別として,アートの賞をとることを目指している
人が居ますが,文句なしにすごいアーティストじゃないけど,アートで食うためには
仕方がないから,勝ち負けはすごく重要になってくる.
安斎利洋2008年08月17日 17:19
>マラソン選手だと,ペースメーカのARが欲しいかも.

観客じゃなく、過去の記録をもった選手とかが、走ってる選手にも見えると、結果に作用するかもしれませんね。心理的ドーピング。

>フェンシングの太田選手が,ニートと書かれてましたけど,似てませんか?

僕はいま「個人事業者」ですが、それって自分で宣言しているだけだから、ニートと同じです。しかも非常勤の給与収入まであって、言い換えるとフリーアルバイター。

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