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篤姫と家族主義全体に公開
2008年07月09日01:10
大きな声では言えないけれど『篤姫』を欠かさず見ている。ホームコメディからピグマリオンまで、物語類型のカタログのようで楽しいのだけれど、将軍家定が「徳川家を守りたい、家族を守りたい」と言う前回の「サビ」は、思わず笑ってしまって泣きそこねた。

「〜を守りたい」は自己犠牲が組み合わさって、物語の正義軸を形成する。時代や場所によって、「〜」は「武家」だったり「のれん」だったり「会社」だったり「国家」だったり。正義は「〜」を必要とする。

たぶんいまいちばん人の心をとらえる「〜」は、「小さい自分の家族」だ。配偶者と子供を守るための行動は、ともかく正しいのだ。家族を大事にするために、家族を大事にする他人も尊重する。すばらしい。家族主義的なプロットを含んだハリウッド映画もめちゃくちゃ多い。かつて、国家を守るために家族を犠牲にすることが真善美であった頃にくらべると、なんと良い時代に生まれたことかと思う。

しかし、「〜」が「国家」から「家族」に降りてきたなら、これから先「〜」は「家族」であり続ける保証はない。「守るべきもの」は不動でも絶対的でもない。国家も将軍家も核家族も、大きさが違うだけだから、この相似形を未来に重ねれば、行き着く先に「地球を犠牲にして人類を守る」も、「人類を犠牲にして地球を守る」もありうるし、「自分を犠牲にしてでも自分を守りたい」なんて面白い解だってありうる。

いまのホームドラマを戦前にやったら非国民なわけだから、いま善でないものが未来の正義になる可能性があるわけだ。だから、そんな未来から見たいまの家族主義は、かつての国家主義のように奇妙だろう。子供のためなら学校も敵にまわすモンスターペアレンツも、家族主義のひとつのあらわれなんだから。

コメント

Mike2008年07月09日 04:50
何を隠そう、この私めも、篤姫はマイブームです。

 開国維新とは真逆で、ひたすら末期の幕府の側に身を置いた篤姫。病弱で夫婦の交わりもままならぬ夫を支えた篤姫。何十ものしきたりの中の大奥で、多くの奥女中と戦いついいは従えた篤姫。
 その篤姫の心を支えたのが、徳川家とその家族を守るという、女性の原点・女性の鏡とも言うべき姿勢。

 「家族に乾杯」を売り出し中の(準)国営放送局にまさに似つかわしいストーリーです。

 篤姫より、ほんの僅か時代をずらし、目を欧州へ点ずると、そこには、シシー(エリザベート)という別の女性像が浮かび上がります。同じく、最後の皇室に嫁ぎながら、女性の自立と皇后という身との葛藤に悩む姿です。
smi2008年07月09日 07:09
「24」のシーズン1が受けたのは、まさにこの「家族」を守るために「国家」を犠牲にできるかどうかという、ジャック・バウアーの懊悩がおもしろかったのだと今、思いいたりました。
バッターボックスに立つ瞬間の「自分のベストコンディション」を守るために、自分も含めたすべてを犠牲にするイチローの職業的エゴイズムを追うNHKの番組も面白かった。
あ っ こ2008年07月09日 09:48
子供を育てている途中にふいな事故で子供を亡くした母親ライオンがなぜかインパラだったか草食動物の赤ちゃんを借りてきて育て始めちゃった!ってはなし・・・・・

「守りたい〜〜〜!!」がほとばしるとああなるって例

おかげで本当のインパラママは遠巻きに見ていることしかできない・・・とうのライオンママはインパラキッズの耳なめちゃったりしてんの!

しかし、ヒトの「守りたいの」はほとばしっているだけじゃない「ほとばしり」を利用しているところがうおぉ〜だ。
それに年中無休で発情しているし・・・・・こまったぁぁ
中村理恵子2008年07月09日 13:44


>泣きそこねた。

泣いてんだ(笑)。
安斎利洋2008年07月09日 13:59
>女性の鏡

MikeさんはNHK視聴者の鏡。
僕は、仕事場の視聴料はらってません。

>自分も含めたすべてを犠牲にするイチローの職業的エゴイズム

すでにそのドラマ類型があったか。
自分の狂気のために正気を犠牲にする芸術家smiの物語、ってのはどうですか。

>「守りたい〜〜〜!!」がほとばしるとああなるって例

思うに、「守る」は他動詞ではなく自動詞ですね。目的語はどうでもいいんだな。

>泣いてんだ(笑)。

うるさいよ。
smi2008年07月09日 20:19
>自分の狂気のために正気を犠牲にする芸術家smiの物語、ってのはどうですか。
それは、ちょっときつそう。
●を守るために■を犠牲にするという設定は、「本当は■をとりたいけど」というよろめきがあってエンタテーメントとしてとても惹かれるし、大好きです。
そのいっぽうで「すべてを捨て去って逃走する」というロードムービーのようなものに、ときどき魂を吸い取られます。
nazo2008年07月09日 21:34
「篤姫」そのものより「宮崎あおい」の応援で見ています。俳優の大先輩たちが脇を固める中で、健気に主人公を張っている姿に「泣きかぶりたくなる」ほどです。

あおいちゃーん、先は長いからねえー、肩の力を抜いてやるんだよー。も〜い〜くつ寝たら〜、にちよう午後はちじぃ〜?
安斎利洋2008年07月09日 23:27
>それは、ちょっときつそう。

いまやってる●と■を逆にするだけですよ。
安斎利洋2008年07月09日 23:29
nazoさん、、、

共感度高いです。

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