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ノンリニアな恋文全体に公開
2008年06月08日03:00
 ある本の挿絵で見た「シベリアのラブレター」は、ノンリニアな言語を考えるときいつも脳裏にただよっていて、カンブリアン・ゲームの着想にも影響を与えている。

 いままでわずかな情報しか知らなかったこのラブレターについて、北方少数民族の言語を研究しているたんぎーさんから、本やURLなど情報の糸口を教えてもらった。

 シベリア北極海沿いの少数民族ユカギールは、白樺樹皮にナイフの刃で描いたトースと呼ばれる絵手紙のような表現形式をもっていて、女はトースで恋の想いを伝えることができた。

写真

 たとえば上のトース。凸の下線をとったような形は娘の家で、とんがった鳥の羽のようなのが人物。ドットで描かれた飾りの房などで、性別や人物を特定できたのだろう。このくらい単純な恋愛だと、相合傘と同じで翻訳は簡単だ。「私の心の限り、あなたを愛しています」

 人生がややこしくなると、リニアな言語で表現しにくい事態が、トースの上では整理される。たぶん書いている女の心も、整理される。

写真

私Aは一人で家にいる。かつての恋人Eは、別の女Hと住んでいて、二人の子どもJKが産まれる。もうひとりの男Nが寄せる想いを、私Aはどうすることもできない。
交差した線が関係を示し、曲がりくねった線が揺れる心情をあらわしている。

もうひとつ、

写真

http://ilin-yakutsk.narod.ru/2000-4/28.htm にあるトース。

サイトに書かれているテキストがロシア語で読めないにもかかわらず、トースを描いた女のドラマが、これまでの二つの例文から理解できるところが、この言語が言語たるゆえんだ。彼女、このあとどうしたんだろうね。

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さらに詳しい情報は、
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=827516288&owner_id=63253 (最後の方のコメント)

コメント

中村理恵子2008年06月08日 06:21
安斎さん

日記後半にある
>もうひとつ、
のトースは、

中心のgは男で、両側の弁髪姿〔スカートの上部近くの点線〕は、これ女でしょ?
それぞれに彼がいる・・・・・
その彼との関係が、それぞれにまた違う。
向って左の、二人に架かる橋は、×(クロス)せずに片橋、つまり片思いかね?
向って右は、×(クロス)してるから、まーまーの相愛なれど・・・
肝は、5体のとんがりの上空に漂う”にょろにょろ”した線や、放物線だねー。
これがその場の空気というか、言葉にならない感情?
あるいは、魂の遊泳(笑)?

それにしても、まん中の、gは、えらく脳ーてんきにみえるね。
トース上部にある台形型の笠の中は、相似形に点々があるものの、えらく気楽に空っぽにみえるじゃん。


たんぎーさん

この人間相関図をどう読むか?ってみんな違うだろうね、しかし(笑)。
専門的な立場からの正解ってのは、もちろんあるんでしょうけど。

お後よろしく〜。
TOSHI2008年06月08日 08:13
Yahoo!の自動翻訳を使って最初のパラグラフを英訳すると、

Birch bark mail of Yukaghirs

Girl smoothed out the piece of the freshlyn-take white part of birch bark by palm. By the blade of knife with the tapering point, slightly pressing, were conducted two vertical lines, which are converged in the apex. To them from each side it added on the pair of inclined, space it filled with slanting “fir tree”, arranged points… And it started the following figure. What this? Elements of ornament or exercise in the calculation?
Before us pictographic, or figure, letter of [yukagirskoy] girl, addressed to young person. Content of letter - acknowledgement in the love.

これをExciteの自動翻訳で日本語訳すると、

Yukaghirsの樺の樹皮メール

少女は掌で樺の樹皮のfreshlyn-撮影白い茎の部分の断片を取り除きました。 2個の行われた縦線(一点に集められる)が頂点にあったならわずかに押される先細のポイントがあるナイフの刃に従って。 それぞれからのそれらに、それが組で加えた側は傾向がありました、それが「モミ」を傾斜させながら満ちたスペース、それが以下の図的に始動した整っているポイント…And。 何、これ-- 計算における飾りか運動のElements?
私たちの前で少女であって、若い人に記述されたyukagirskoyのpictographic、または図、手紙。 手紙の中身--愛における承認

英語訳のままのほうがわかりやすいかもしれない。
あ っ こ2008年06月08日 13:03
すんげ〜フィット感! 

小学校3年生の時にクラスの男子が無言で私にくれた「いしっころ」をいま手にとって握り締めてしまっ・・・・・・・ぁぁぁ
(なんでそんなもんいまだにもってんだか・・・)

「言葉」ってぁぁことばってってってって
安斎利洋2008年06月08日 14:01
>中心のgは男で、両側の弁髪姿〔スカートの上部近くの点線〕は、これ女でしょ?
>それぞれに彼がいる・・・・・

性別が、まったく逆だと思うぞ。関係は、その通りだと思うけど。
まあ、中村さんにとって性別なんてどうでもいいのかもしれないけど。

>Yahoo!の自動翻訳を使って最初のパラグラフを英訳すると、

その手があったか!
しかし、図2については、幸いなことに、研究者のひとつの解釈しか書いてませんね。
せっかく先入観なしの状態なんで、「こういう意味です」と断定されなくてよかった。
安斎利洋2008年06月08日 14:04
>クラスの男子が無言で私にくれた「いしっころ」

こういうの?
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=88893850&owner_id=63253
たんぎー2008年06月08日 14:30
ユカギールという民族は、かつては広い範囲に住んでいたけれど、いろいろと不利なことが重なって今ではものすごい弱小勢力です。ロシア文化だけでなくトゥングース系やサハの文化に取り囲まれて、影響も受けている。それなのについ最近まで独特の「トース」があって、これはトゥングースの記号文化とも違う。不思議です。三角形で人間を表すのはトゥングースの着せ替え紙人形(シラカバ樹皮人形)っぽいけれど、足(というか柄?)の部分は独特ですね。

ちなみに、ニヴフ民族などサハリンの北方少数民族は「恋愛」に関して記号や絵は使いません。思いっきりリニアな歌の世界です。

あ っ こ2008年06月08日 14:34
↑ もうちっと原始的なやつ・・・・・・!!?きゃはは
安斎利洋2008年06月08日 14:53
>三角形で人間を表すのはトゥングースの着せ替え紙人形(シラカバ樹皮人形)っぽいけれど、足(というか柄?)の部分は独特ですね。

着せ替え人形ですか! それがコードになってるのかもしれませんね。リカちゃん人形で、愛情表現するようなものかな。女の子がママごとの延長で、ママ(リアル)な状況を表現する、ということでしょうかね。
絵手紙は、19世紀というような記述をみかけましたが、着せ替え人形はもっと前からあったんでしょうか。
それから、図3は、これは現代のものですか。もっと古いもの?
たんぎー2008年06月08日 15:52
私が知っている紙製三角形の着せ替え人形(どうやら女の子用らしい)はアムール川筋のナーナイ民族のものです。どれだけ古いのかは分りませんが、現存しているのは古くても19世紀だと思います。詳しいことは知りませんが、どうやら結構広く分布していそうだ、と思っています。誰か確認してくださいな。面白いテーマだと思うんですがねえ。

ユカギールのトースも、図3(ヨヘリソン採集)はじめみな19世紀の資料のはずです。だからといって、これまた「昔はなかった」と言えないところが、シベリアあたりなんですが。

ところでトゥゴルコフの指摘では「恋の告白は男性から」という決まりがあった(シャルゴロツキーからの引用)ので、女性からの告白がトースによっていたそうです。とすれば、確かに人形とは「女性つながり」があるかもしれません。うーむ。
安斎利洋2008年06月08日 16:01
>女性からの告白がトース

女性の唯一の告白手段というのは、ちょっと前のバレンタインデーですね。
いまは、ぜんぜん唯一じゃないけど。

着せ替え人形との関連は、現代のフィギュアにも通じるし、非常に興味引かれるテーマです。なにか資料のいとぐちがあったら、教えてください。

ロシア語、読めたい。

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