安斎利洋の日記全体に公開

2006年01月30日
18:23
 仕事の値段
ライブドアの一件は、いろんなひとがいろんなことを言い始めるのが面白い。テレビ報道は相変わらず馬鹿丸出しの反応をしているけれど、ブログを見る限り反発も同情もあるし、もっと根の深い観察も多く、いろいろなことを考えさせられる。

数年前、会社の取締役というわらじを脱いで、完全な個人事業者になった。そのときにいちばん身に染みたのは、自分の仕事に値段をつける困難さ。会社の価値体系の中では仕事の値段は自明の相場で決まるのに、フリーだとそうはいかないときがある。

同業他社(他者)の仕事に比べて、こいつの仕事より3倍神経使っているとか、この仕事より10倍価値がある、といように同じ領域の仕事と比較をすることはできる。しかし、何も比較対象がないときは困る。そういうとき、食費やら住宅ローンやらを基準にして、何ヶ月の生活をかけるからいくらというようなことを考える。

しかしふと思うのは、自分の仕事を土地の値段や野菜の値段と交換するレイトなんて、どこにも基準がないということだ。閉じた系の中では、仕事の比較や需給のバランスが意味をもつけれど、ワープロソフト一本とダイコン一本の比較に意味はない。そのレイトを決める機構は、ほとんど粉飾で決まっているようなものだ。特に、土地や不動産の値段にこれほど振り回されなきゃならない原理的な必然は、どこにもない。

すると、自分の仕事に対してたとえば200万円という値が浮かびながら、1000万円でも10万円でもタダでもいいような気がしてきて、おっとっとと心の中で自分の頬をたたいて、300万円と言い直したり。

ものの価値のポテンシャルエネルギーで走っているつもりの資本主義というエンジンは、実は燃料を切り離しても自走できる。根拠のない数字が、舞っているだけ。この無根拠性がインチキだし、同時に原稿用紙やソースコードを米や車に化けさせる魔力の正体でもある。それをとことんエンハンスすると、祠を暴いたガキのようにこっぴどく叱られるわけだ。
 

コメント    

2006年01月30日
19:28
ryukow
”祠を暴いたガキのよう”に思わず笑っちまいましたよ。

このネタ、語り始めると長くなるのでまた今度 (笑)
2006年01月30日
19:54
大和田龍夫
労働価値説で考えるのか、需要と供給が交わったところで価格を決める(一物一価の法則)で考えるかの違いもあるんでしょうが、なんか、ここ数日で(私の)価値が暴落したりするそんな今日このごろ、なるほどと深くうなづきました。
今月の日経新聞「私の履歴書」(北杜夫)がお気に入りです。
2006年01月30日
21:05
imochang
ときどき、仕事に対する値段が解らなくなる(ぼったくってるような、大損をしているような・・・)この商売を辞めて、スーパーでレジを打とうかと思いますが、時給を計算した途端に、やっぱりデザイナーにしておこう・・・と思うゲンキンな私は、祠というより、棚の上に上がったサルです・・・
2006年01月30日
21:10
Mike
それぞれの分野の先人は、自分たちの仕事に「適正な」値をつけ、それを社会的に信頼置ける(=社会的に認めさせる)ようになるための努力をしてきたのではないか、と思います。
 たとえば、家庭教師の料金、床屋の料金、マッサージ師の料金、カウンセラーの料金、などなど。
2006年01月30日
22:07
安斎利洋
土地建物の値段を決めた先人の顔が見たい、と思いませんか?
2006年01月30日
22:24
安斎利洋
ryukowさん、続きは4日川越で。

>(私の)価値が暴落
自分を上場してみたいですね。気が気でないだろうなー。

>ぼったくってるような、大損をしているような・・・
それぞれ自分の中にこのバランスメータはありますね。時々針がひっかかって、わからなくなる。
2006年01月31日
02:37
>(私の)価値が暴落
誰が何と言おうと、急いで粉飾決算!
気づいたら、自分の株に投資していたのは自分だけであったとしても、価値は下げたくないですね。。
あ、これって投機か??
2006年01月31日
02:49
安斎利洋
yfujiさん、何かすごい細胞をみつけたら、株があがる前にメールください。インサイダーより。
2006年01月31日
07:16
MERC
家を建てている細胞とか、お客様をお招きしている細胞とか?発見すれば、寺尾聡でなくとも驚くでしょう。

そもそも通貨というもの自身、なんだか怪しい。変動為替制度で、日々刻々と国同士の価値が(机上でディーラーの思惑で)変動しているなんて・・・

昔、ローマでは、賃金を塩で払っていたという。日本なら米で払う精度があった。サラリーマンの邦訳は禄高人間が正しいかも・・・
2006年01月31日
12:09
H.耕馬
>ryukowさん、続きは4日川越で。

お待ちしております。>ryukowさん、安斎さん、中村さん
他の方も、都合がつけばゼヒ!!
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=74795027&owner_id=107483
2006年01月31日
16:00
ryukow
先のことだと思っていたら、もう今週末ですね。

最近精神的に枯渇してきているのでお会いできるのを楽しみにしていますよ>週末、川越な方々。
2006年01月31日
16:33
H.耕馬
夜の部も出来るだけ、こちらに来ていただかないと体験出来ないお店に、お連れしたいと考えておりますです。

(日記の趣旨と違っていてすいません。)
2006年02月01日
03:53
安斎利洋
>家を建てている細胞

あのCMを見るたびに、これを思い出します。
『プラニバース―二次元生物との遭遇』A.K. デュードニー
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4875021607/250-7567705-5926666
2006年02月01日
06:12
小林千早都
仕事の値段ですね・・・これって本当にむずかしい。
前例なり似たようなものがまわりにあればいいのでしょうけど、
安斎さんのお仕事の場合、比較する対象がほとんどないでしょうから、
最終的には本人の納得価格でしかありえないのですね?
2006年02月02日
07:11
MATANGO
余暇にバッハを弾くという中国のインテリが、例の大革命で職を失い、にわか商売をはじめました。でも、ちっとも儲からないので、知り合いの商売人に教えをこうたんだそうです。そしたら...。
「先生、それタメあるよ。先生の性格がよくない」
「性格?そうかね...」
「そうそう、先生は正直あるね。商売の基本はウソをつくこと、そして人をダマすこと。これてきない人、かならず失敗する...」

なんと身もふたもない...と思うんですが、考えてみれば「これ50円で仕入れたから、あんたに250円で売ります」...と原価を明かして商売する人は、世の中にひとりもいない...。
これを「うそ」「だまし」というなら、たしかにそうだなあと...。
そういえば、「WinWinの関係」とか言ってた人も結局...。

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