安斎利洋の日記全体に公開

2005年02月04日
09:44
 特許の中の腐った川
いま「遺伝的ペイントシステム」というのを作っているが、これはたんに実用ソフトであるだけじゃなく、ある主張、ある思想をこめている。

鈴木健さん(http://mixi.jp/show_friend.pl?id=20173)がpicsy(http://www.picsy.org/)という貨幣システムを設計しているけれど、これもたんなるプログラムではなく、いわばマルクスが資本論を書くのと同じような、ある思想の表現だと思う。

つまりシステム設計、コンピュータプログラム開発は、工業的なデザインであるだけでなく、エクリチュールであるということだ。特許の問題は、ここにからんでくる。

作家は作家のやりかたで、他人の領域を踏まない工夫をする。それは「私」を形成する技術だ。多くのものが私に流れ込んできて、それを豊かに変質して流しだすのが、作家の使命だ。地雷を踏まない工夫をしているわけではない。

特許は、あたかも何も流れ込んできていないように偽装し、そして何も流れ出さないようにしがらみを作る。

ありきたりのソフトウェア部品を組み合わせて作るプログラムと違って、新規性のあるプログラムを書いている人なら、誰もが「きっとどこか地雷を踏みかけている」と思いながら、おっかなびっくりコードを書いている。

流れのせき止められたよどんだ川では、水が腐ってしまう。何とかせねばと思う。
 

コメント    

2005年02月04日
12:47
nm
> システム設計、コンピュータプログラム開発は、
> 工業的なデザインであるだけでなく、エクリチュールである

なら、研究もそうだな、と思いました。他人のアイディアに目を配っていて、いいものがあったらそれを積極的に組み込んで、その当人に、「あなたのアイディアのお陰でこちらはこんだけ変われたよ」という再提示を繰り返すことで話が進むものだと思います。

特許の話が、安斎さんを通すと、こんなところにつながってくるんですね。
2005年02月04日
20:35
安斎利洋
謎のnmさんからコメントをいただき、光栄です。

研究もBlogも、コメントがついたり引用されてうれしくないわけはないので、特許になったアイデア自身だって、外に出たくてうずうずしていると思うんですよね。特許庁のキャビネットは、知識牢獄。
2005年02月06日
23:31
イトカワ
安斎さん、「流れのせき止められたよどんだ川では、水が腐ってしまう。何とかせねばと思う。」前に似たようなこと本で読んだんですけど何の本だったか思い出せなくてもやもやもやもやしてます・・・・・・・・・。納得。。
2005年02月07日
00:40
安斎利洋
よどめる水には毒ありと思え ウイリアム・ブレイク
かな

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