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お馬鹿のきらめき全体に公開
2008年03月28日03:23
ここ数日テレビをつけると、「お馬鹿タレント」たちの出るクイズ番組ばっかり。馬鹿を流行らせてどうするんだ、

と言いながら、実は、つい見入ってしまった。お馬鹿の面白さは、笑い飛ばすにはあまりに奥が深い。彼らはウケを狙っているにもかかわらず、いわば手放しで自走する馬鹿がすばらしく、ときに神話的ですらある。

で、思い出したのがボルヘスの思い描いた、古代中国の動物分類法。

「動物は次のごとく分けられる。(a)皇帝に属するもの、(b)香の匂いを放つもの、(c)飼いならされたもの、(d)乳呑み豚、(e)人魚、(f)お話に出てくるもの、(g)放し飼いの犬、(h)この分類自体に含まれているもの、(i)気違いのように騒ぐもの、(j)算えきれぬもの、(k)賂蛇の毛のごく細の毛筆で描かれたもの、(l)その他、(m)いましがた壷をこわしたもの、(n)とおくから蝿のように見えるもの。」

フーコーの『言葉と物』は、16世紀の思考のフレームワーク(エピステーメー)を、この笑っちゃうような架空カテゴリーから語り始めているところが、実にかっこいい。

もうひとつ、ボルヘスの「古代中国の百科事典」を引いているのがレイコフの『認知意味論』。この硬い書名は日本語訳だけで、原書名は 『Women, Fire, and Dangerous Things』。よくあることだけれど、原題のほうがずっと魅力的だ。「女、火、そして危険なものたち」は、オーストラリア原住民のジンバル語にある、カテゴリー構造の一部だ。

こういう混乱した連想の鎖のきらめきを見ていると、僕らがいかに小賢しいロゴスのデフォルトに支配されているかがよくわかる。手放しのお馬鹿になることに比べたら、賢くなることなど、たいしたことじゃない。

コメント

godzi22008年03月28日 05:07
ということを賢い人が言っても、説得力はない。
TODO2008年03月28日 06:24
突然のお馬鹿キャラの台頭ですがみなイケメンなんですね。
指揮者は伸介?
H.耕馬2008年03月28日 09:23
お馬鹿は知識や経験則では無く感性でシャベル?
中村理恵子2008年03月28日 09:48
>(d)乳呑み豚

あたし、これに分類されたい、なぜだか(笑)。
安斎利洋2008年03月28日 19:04
>ということを賢い人が言っても、説得力はない。

お馬鹿が読む問題文を聞き、どう間違って読んでいるか推論しながら、正しい答えを言う、というゲームで、ラサール石井が抜群の正答率なんですよ。おバカを知り尽くした賢さ、というのはすごいと思ったね。

>みなイケメンなんですね

ある意味、天は二物を与えたんでしょうね。

>お馬鹿は知識や経験則では無く感性でシャベル?

たいていの人は知識や経験を積んで、判断に「デフォルト」をもっているんだけれど、お馬鹿はたんに知識や経験をもたないというんじゃなくて、ときどき別のデフォルトを突きつけてくるのが面白いわけですよね。感性というより、異文化に近いかも。
安斎利洋2008年03月28日 19:08
>>(d)乳呑み豚
>あたし、これに分類されたい、なぜだか(笑)。

「いましがた壷をこわしたもの」も、よかったらどうぞ。
H.耕馬2008年03月28日 22:42
(h)この分類自体に含まれているもの、

(l)その他(この分類自体に含まれていないもの)
だけで、
集合としては十分カブァーしているやに思う。

別に突っ込んでもしかた無いんだけど、、、

(a)皇帝に(g)放し飼いで(c)飼いならされた(i)気違いのように騒ぐ犬が(m)いましがた壷をこわした

とかツナイデ遊ぶのとチャウか?
安斎利洋2008年03月28日 23:12
>とかツナイデ遊ぶのとチャウか?

分類すると、かならずいくつものカテゴリーに入れたくなるものが出てきて、そのうちメルトダウンするようにできてるんですね。

そういうときは、「この分類自体に含まれているもの」っていうフォルダに入れてしまえばよくて、そのフォルダの下にもたくさんフォルダもあるから、フォルダはどんどん増えていく、って僕のハードディスクのようだ。
ササキナルアキ2008年03月30日 01:05
「お馬鹿タレント」たちの出るクイズ番組ばっかり。

馬鹿がバカに思えるのは、滑稽さを暴露したときだろうけど、
クイズ番組ってのは、そのためのプレステージですね。

「そんなのかんけいね〜」って裸芸、つまり身も蓋もない芸が受けるのも、
日々ウツウツと問題意識ばかり育ててしまう社会に対して、
あんな風に「開きなおりたい」と思う無意識が受け入れるんだろうけど。


つい数年前までは、急にいきりたって、怒鳴るタレントが、ずいぶん多かった。

あそこまでは芸でしたが、いまではバカが人々の憧れの対象。
芸というより、新しい才能と捉えられてるんじゃないかなぁ。

安斎さん すこし学びましたね(笑)
 
 
安斎利洋2008年03月30日 02:59
たしかに芸人の流行り廃りは、社会を投射した逆像かもしれませんね。

そういえば、、怒鳴るタレントが流行っていたけれど、いまキレる芸をやっても、見ている方も日常にキレかけているから、シャレにならないかもね。

おバカが流行るのは、自分よりバカを見て優越感にひたりたいためだ、という分析をするブログがたくさん検索にかかるんだけど、そんなのんきな話じゃないでしょうね。フーコー流に考えると、「お利口」という権力が生まれるためには、洗練されたおバカが必要なんでしょう。キャリブレーションとして。
ササキナルアキ2008年03月30日 03:59
素人限定! 不良同士のガチバトル『THE OUTSIDER』明日開戦!!

明日3月30日、全国から腕に覚えのある不良たちがディファ有明に集い、リングの上でガチ勝負を行う。イベントの名は、『THE OUTSIDER』。あの「格闘王」前田日明がプロデュースする、“素人”同士のケンカの祭典。

http://www.boutreview.com/data/news05/080330outsider.html

 
神様に捧げる祭典として開催された古代ギリシャのオリンピックよりも、
ヒエラルキー社会の象徴としてのコロッセウム(円形闘技場)アリーナの
方がテレビ的っすね。

テレビがよくできてるのは見上げるより見渡す視座を発生させるところで、カースト制や士農工商的な社会的な既約を社会構造ではなく、共同幻想的として作り上げるところじゃないかなぁ。

まるで金魚鉢を覗きこむような、どことなくサディステックな眼差しを強要させる。

ただし番組の途中に挟み込まれるCMでは、逆にオリンポスを見上げるような、あこがれという視聴者のイマジネーション、自虐的でマゾヒスティクな視座を形成します。


 
H.耕馬2008年03月30日 08:00
> 自分よりバカを見て優越感にひたりたい

では無くって、

> 日々ウツウツと問題意識ばかり育ててしまう社会に対して、
> あんな風に「開きなおりたい」と思う無意識

のと同じように、おばかに対して
自分も、ああゆう風にお気楽・極楽に生きたい
という願望なんじゃ?
ちゃ〜り〜田中2008年03月30日 11:36
ああ、それあります。とくに今は決算期(とか卒業/新学期シーズン)なので、「現実を見よ(強制的に変われ、合わせろ)」と言われてへこんでいる時、そんな時期に合わせて、「ちょっとバカな人(社会利益よりも個人優先なのかな)」を演じる人(タレント)たちを見る。
→「こうなりたいか?」という問いを感じる。個人的にかもですが、
そういう価値観のものに憧れる欲求を満たしてくれるのかも(笑)
安斎利洋2008年03月30日 16:43
テレビ=アリーナ論、面白いですね。クイズにからめて思い出すのは、高校生クイズですね。友人が作ってました。

少し前までは、クイズというと、コモンセンスを超えた知識をもっている人、たとえば所さんとかがアリーナの中心にいたんだけれど、それはあるところで飽和してしまった。

おバカというのは、ある意味でコモンセンスを別のベクトルに逸脱しているわけだから、「よくこれを知らずに生きてこられたな」という驚嘆がある。

クイズの正解というのは、「現実を見よ(強制的に変われ、合わせろ)」といわれ続けたわれわれが共有する「コモン」の正体で、それを知らないおバカが受けるのは「自分も、ああゆう風にお気楽・極楽に生きたい」という羨望も混じってるんでしょう。

道化と偉大な芸術家は紙一重。岡本太郎も同じようにアリーナに放り込まれたんだろうな。

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