安斎利洋の日記全体に公開

2005年12月19日
00:47
 ATAK@ICC
良い作品に触れると感動したりするわけだけれど、より深く自分の制作にかかわる作品の場合は感動どころではなく、そうきたかとか、俺ならこうしないとか、うれしかったり悔しかったり、頭の中にyesとnoが錯綜し、えらいことになる。

最近だと、クロノス・プロジェクタなどはその例で、時間軸を空間と等質に扱うことについて、爆発的に自分のテーマとの交配が始まり、えらいことになる。
http://www.k2.t.u-tokyo.ac.jp/members/alvaro/Khronos/Khronos_Projector.htm

今日の池上高志×渋谷慶一郎もそうで、音高、音価、強度と、音色が多重分節化しているいまの音楽に辟易していた耳に、突き刺さった。倍音構造を聞き分ける耳だけが、音楽を聴くわけではない。
http://www.ntticc.or.jp/Schedule/2005/PossibleFutures/Performance/performance04_j.html

なにしろ面白かったのは、人間や認知の枠組みをまったく考えないその方法。そもそも人間という枠組みはたんなる発明にすぎず、20世紀後半のアートには、人間の境界をいかに拡張していくかという興味のなかで進んでいた。なんで最近のアートは、こんなになごんでしまったんだろう。

1950年代のダルムシュタットは、きっとこのようなYesとNoの錯綜する空気だったに違いない。
 

コメント    

2005年12月19日
01:00
大富豪家2.0
行けなくて残念でした...
どこかで聞く/体験することはできるのでしょうか?
2005年12月19日
01:37
Linco
池上高志×渋谷慶一郎、聴いてみたかったです!
2005年12月19日
01:47
やららました。
2005年12月19日
01:50
安斎利洋
>どこかで聞く/体験することはできるのでしょうか?

wavで聞きたいですね。mp3には、なりづらい音楽です。
2005年12月19日
01:50
あ、ろれつがまわってません。
昨日で心拍数があがり、今日は脳随に来ました。
YESもNOも飛び越えてグワンと殴られました。
2005年12月19日
02:34
安斎利洋
普通に考えると、99%の人、99%の感覚、99%の音はNoだと思います。僕は、20%くらいYesだった。5つのsound fileのうち、3が実に面白かった。
2005年12月19日
04:24
klon
人間のことなんて考える暇ないですよ笑
2005年12月19日
09:36
安斎利洋
klonさんの音楽は、それでもやはり人間の心拍や呼吸や、耳のFFTを知り抜いていると思いますよ。
2005年12月19日
11:07
ikeg
とりあえず自分たちがアートに対してもっているスタンスやフレームが揺らせたんならよかったと思います。安斎さんのコメントはすごいですね。すばらしい。ありがとうございます。
2005年12月19日
12:43
安斎利洋
ikegさんが次々繰り出してきたアイデアは、どれもエレガントですばらしいものでした。それが渋谷さんの「ふるい」にかかり、僕らの耳に届き、しかしはじめはなかなか音楽が聞こえてこない。なんで聞こえてこないのかと考えるのも楽しかったんですが、soundfile3あたりでまるで立体視がばんと立ち上がってくるような感じでした。昔、ブーレーズのピアノソナタ第一を聞いて、突然セリエルが音楽として立ち上がってきたときのことを思い出した。
ともかく、悔しい晩でした。
2005年12月19日
15:43
kapibara
はじめまして。

安斎さんの日記を読んでますます行けばよかったと思いました。podcastかなんかで聞けないもんでしょか?

あと、倍音構造が分からない耳にも聞き分けられるものなんでしょか?
2005年12月20日
03:27
klon
sound file3というよりtr3ですね。
あれは膨大なsound fileの部分を接合して曲という単位に
しているのです。
3曲目は確かに分かりやすく第三項的なのですが、僕は
2、5曲目のようなものが出来たことが収穫でした。
2005年12月20日
03:38
安斎利洋
>podcastかなんかで聞けないもんでしょか?
そんなことしたら、iPod壊れちゃうかもしれません。

>倍音構造が分からない耳
正確には、倍音構造でない組織がわからない耳、と言うべきです。倍音構造は、楽器の音がわかる人なら誰でも聞こえるけれど、倍音構造でない音の組織から音楽を感じる力は、もしかすると訓練が必要になるのかもしれません。
2005年12月20日
03:40
安斎利洋
>あれは膨大なsound fileの部分を接合して曲という単位に
しているのです。

そこいらへんが実はいちばん不透明で、渋谷さんの話をみんな聞きたかったところなんじゃないでしょうか。
僕は、SIBUYAというsound fileの書き換え機械が力学系の中に組み込まれて、最後はひとつのsound fileが1トラックになるべきでないかと思います。
2005年12月20日
03:54
klon
いわゆる楽音的な尺度ではなく感じるというのは、いい声だな
とか気持ちいい触り心地だなとかいうのと近いです。

>僕は、SIBUYAというsound fileの書き換え機械が
>力学系の中に組み込まれて、最後はひとつのsound fileが
>1トラックになるべきでないかと思います。

これは問題なんですよね。そこにどんなに複雑な構造が
あっても1トラックになると面白くなることが多すぎるし
やはりレイヤーは音楽に必要な気がしてます。
というのも今、xenakisがやっていうたupicのCDをかけながら
聴いてるので尚更そう思います。
ただ変奏のバリエーションを組み込むことはこれからやる
ところです。
2005年12月20日
04:37
安斎利洋
セルオートマトンをテクスチュアジェネレータにして絵を描くっていうことを昔やっていたんですが、それは何か違うぞと今は思うわけです。
レイヤー間に、人の恣意的な操作でなく、自己組織的な結びつきがほしい、人はその回路を仕組むというかかわりかたをしてほしい、と僕は思っちゃうんだけれど。
2005年12月20日
05:11
klon
テクスチュアジェネレーターとはちょっと違うと思うのですが
全体や構造に関わる部分は変奏などの横軸的なプログラムを
シュミレーション+ブラッシュアップしてから進めるのが
いいのかなと思っています。聴いて面白いかどうかが非常に
重要なので。
2005年12月20日
10:52
安斎利洋
それは面白いですね。構成の原理と、音の生成の原理が分節化しない方向がみつかるといいですね。

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