安斎利洋の日記全体に公開

2005年10月04日
18:06
 叫ぶ文字
パワポの話(承前日)が、だんだん書き言葉のもっている声としての性質に食い込んできた。

亡くなった野村万之丞さんが、声の抑揚に合わせて大きくなったり色が変わる字幕を、狂言をやっているその場で作れないかなーってことをしきりに言っていた。この人は面白い!と思いつつ、内心それちょっと違うかもなとも思った。この背反する気持は、まさにパワポ問題。言葉に宿る魂のありかが、話し言葉と書き言葉では違うという思いが、なかなかぬぐえない。

で、草原さんのもってきた作品を見て、いろいろ考えがふくらんだ。

高橋メソッドは
http://www.rubycolor.org/takahashi/
映画のトレイラーみたいで気分が悪いけれど、

http://www.yhchang.com/NIPPON.html
これはラップ

http://www.yhchang.com/ORIENT_JAPANESE.html
これは叫ぶ詩人系

文字にしゃべらせる、っていう問題はそんな単純じゃないし、可能性はいろいろあるかもしれない。5−7−5カンブリアンで玉簾さんが、俳句の走り書きの写真にこだわった理由も、このあたりにある。何か、自分でもやってみたくなってきた。
 

コメント    

2005年10月04日
20:42
imochang
文字は、誰がなんといっても、断然叫びます。
文字に関しては、まず間違いなく、安斎さんと私は、異なった思考の文脈を生きていると思いますが、少なくとも、子供が覚えたての文字を書く図は、とにかく全てが叫んでいます。
そこまで戻ると、大変、面白いです(腰も砕けます・・・)
あと、「愚徹!」と叫びながら、ホウキのような筆を振り回した書家・井上有一氏は、大学時代の、頭でっかちにすぎなかった私の「文字観」をくつがえした芸術家のひとりです。
「叫ぶ文字」・・・ある意味、長年にわたる私のテーマ、安斎さんがどのように発掘されていくのか、楽しみでなりません!!
2005年10月04日
20:56
MATANGO
...おお、おもしろいです!.....これだけで「映画」のやっていることのほとんどは実現できてるのかも、とすら思いました。

>文字にしゃべらせる
...というので思い浮かんだのは、中国語です。
ちょっとまた長くなりそうですが、ご容赦ください...。

中国語は、漢字一字が単語としての役割を果たすそうです。
発音も、日本語の漢字とちがって文字とちゃんと一対一対応していて、しかも声調があるので、聞いただけで「どの文字なのか」わりと区別がつくらしいです。
(それにひきかえ日本語の、とくに音読みされる漢字のコトバは、聞いただけでは、なにをいっているのかサッパリ...)

素直に「文字」ー「音声」がつながっていて、しかもそれが「意味するもの」(あれ?されるものかな?)とも、わりに一直線につながる。

で、あるカンフー映画を見ていて「なるほど!」と思ったんですが、これは運動にもつなげることができる。
カンフーの型には、よくナントカナニ拳という長い名前がついていますが、その動作のひとつひとつは、どうやら漢字一字であらわすようなんです。

「蹴=シュウ」といえば「ける」、「把=ハア」といえば「つかむ」、「打=ダッ」といえば「なぐる」...というように、もっと微妙な動作も「一字=一語」であらわすらしい...。

これが便利なのは技を覚えるときで、一度「文字=音声」と「動き」の関係を覚えてしまえば、いくつかの動きを組み合わた複雑な技は、漢詩みたいな漢字(発音)の連なりで覚えてしまえばいいし、教えたり、練習したり、戦うときにもすごく便利...。
(くわしくは、ワンス・アポンナ・タイム・イン・チャイナ...黄飛鴻という楽しい映画をご覧ください)

カンフーのあのおそろしく早い動きは、こういう「文字=音声=運動」が一連につがっているからこそできるのかと...。

それと、歴史カンフーものでは「技の奥義を書いた秘伝」をとりあう...なんて設定もよくあるけれど、この「秘伝」も、その意味するところを必死で読み解く(行間を読む?)みたいなものではなくて、動きと文字の関係さえつかんでしまえば、まるで暗号を解くようにわかる、「動きの楽譜」みたいなものかもしれない...と妄想しました。

「文字にしゃべらせる」どころか、「文字で人を動かす」ことすらできる....中国語ってすごいなあと...たぶん過剰な理想化でしょうが...。

それにしても日本語は、漢字や直輸入語のおかげで「文字=音=意味」の関節が、意味もなくやたらにはずされてるような気がしてならないんです。

でも反面、日本の剣道とか相撲のように「立ち会いの間合い」みたいな「文字にならない、動きのない動き」は表現もできないし、表現できなければ存在もしないみたいなことも...。
ああ、それでカンフーは、延々戦っているのにちっとも勝負がつかないのか...。
2005年10月04日
21:00
安斎利洋
imochangには、絵ことばのときにものすごく面白い作品を作ってもらいました。あの架空文字体系によるテキストは、絵であると同時に文字でしたね。

文字は肉声の血肉をそぎおとして、抽象的なロジックを裸にしたようなものですが、書は、文字がもう一度、血肉を取り戻すこと。

そういう、文字の血肉っていうのは、テーマとして面白いかな、と思いました。

平田ヲリザさんが、台詞の並立するポリフォニックな芝居をしていますが、ああいうふうに言葉の断片がカンブリアンでどんどん接続していく、みたいな世界を、あっためてみようか、と。
2005年10月04日
21:09
安斎利洋
cambrian gameをgoogleで引いて偶然みつけたんですが、台湾の方がカンブリアンゲームについて論文を書いています。タイトルが

互動式網路漫畫的發展

中国語は、すごいな。1文字ごとに頭の中で論理が組みあがってきますね。
互動式網路、いいですよね、この表現。しかも漫畫的發展なんだ!

この論文、googolにはひっかかって、HTMLはあるんだけど、
http://66.102.7.104/search?q=cache:lQt0fRP4DHAJ:ma.ntua.edu.tw/mmlab/results/conference-2003-8.pdf+%22cambrian+game%22&hl=ja
もとのpdfのリンクが切れているのが残念。誰か訳して!
2005年10月04日
22:10
中村理恵子
安斎さんさ、↑こりゃーたぶん2・19「メルまんだら」で出会った人じゃないの?
http://www.mell.jp/symposium/2005/2005report_mandala.html
2005年10月04日
23:05
安斎利洋
王年燦 國立台灣藝術大學多媒體動畫藝術研究所副教授

って、国立台湾芸術大学マルチメディア動画芸術研究所、ということだよね。いや、あのときアジアから来た大学に、台湾芸術大学の名前はなかったと思うよ。


2005年10月04日
23:11
nao
『互動式網路漫畫的發展』
この表現、すごくいいですねっ! 感激しました!
カンブリアンのこと、すごくよく言い得ているような...
でも、文字の模様だけ見ていると、なんだかよくわからないような...。
漢字って不思議ですね。
2005年10月04日
23:26
stella
漢字はやはり象形文字からストレートに派生しているので、直接意味が伝わり、イメージが膨らみますね。
覚えにくいものも話しにくいものも、頭の中で漢字に変換するとうまくいくことが多いです。

しかし、ほんとに文字が叫んでいますね。
フォント、色、サイズなどの視覚的な要素だけではなく「意味」でしょうか。
更に手書きにはいのちがある気がします。
2005年10月05日
03:40
安斎利洋
stellaさんのコメントを読みながら漠然と考えたのですが、写真を文字的に使ったカンブリアンってできないかな。
既存の文字に似た写真、ということではなく、文字のように機能しそうな写真を投稿するわけです。
蔓のからんだ植物の写真は「分かちがたい仲良し」という意味、のように。すると、その写真を形容詞にした二匹の犬の写真は、「分かちがたい仲良しの犬たち」という意味になる。

というような。
2005年10月05日
08:57
Hiro
長谷川町子さんが一時期、朝日新聞で絵文字入りの文章を
連載しておられたのを思い出しました。
あれをもっと推し進めて、全ての品詞の単語を写真で作る
ということですね。

いやいや、普通の言語の品詞とか関係ないのかも。
もっと独特の文法が出てくるのですかね。

そういや、手話の文法というのは、普通の言語とは
違うんですね。手話通訳のひとから聞いたことがあ
ります。
2005年10月05日
11:24
miyako/玉簾
「互動式網路漫畫的發展」
わー!絵的で意味が一目瞭然です!

この文字だけで、

互動式網路漫畫的發展機

っていう機械を想像しました。
台北の町外れにある古びた工場にある、怪しげな機械みたい。でもその工場の入り口は、かがまないと入れないのです。

そうそう、台北駅前にあった新しい若者向けのファッションビルの名前は

「吸引力」

でした。ビルは四角だったけどラッパの形のイメージ。
台湾は、古い漢字をそのまま使っているので、文字がよく喋りますね。
2005年10月05日
12:36
nao
>台北の町外れにある古びた工場にある、怪しげな機械みたい。でもその工場の入り口は、かがまないと入れないのです。

あぁっ。そこ、行ってみたいです!
わたし、かがむの得意です♪
2005年10月06日
01:27
>互動式網路漫畫的發展機
曼陀羅式互換的迷路機
ムフ
2005年10月06日
07:14
nao
>曼陀羅式互換的迷路機
迷ってみたい♪
ムフ
2005年10月06日
14:43
安斎利洋
>曼陀羅式互換的迷路機

次の開発目標といたします。

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