安斎利洋の日記
2007年02月26日
18:38
さごと
他人のしごと(仕事)を作り出すこと、それを仮にさごと(鎖事)と呼ぼう。
さごとは、チェーン・リアクションを引き起こすしごとのこと。
同じ労働の回路でも、しごとフローと、さごとフローとでは、見えてくる流れが違う。しごとは、電流のようなもの。さごとは、情報のビットだ。
かつて、日々の生活がほとんど生存にかかわるしごとで占めていた頃、生存のためのしごとを分散する手段が必要だった。
生存が容易になると、生存にとってクリティカルなしごとのしめる割合が、全しごとに対して小さくなる。すると、みんなが漏れなくしごとをするために、しごと分配自体が自己目的化してくる。
しごとは、生存のための作業ではなく、しごとそのものの自己目的化である。しごとのためのしごとが生まれ、しごとを連鎖的に創出する。言い換えると、さごとはしごとの「遊び」だ。
良いしごとは人を黙らせる。良いさごとは、人を黙らせない。
カンブリアンリーフで考えるなら、多くの分岐を生むのはさごとで、感心されながらそこで終端となるリーフは、良いしごとだが、さごとではない。
オープンソースは、典型的なさごとだ。クリエイティブコモンズは、しごとをさごとに変換する知恵だ。
そうやって、いろいろなしごとのさごと性を考えてみる。自分のしごとの価値は、さごとの価値で測ると別の分布図にがあらわれる。
会社は、しごとのことを考えるが、さごとのことはあまり考えない。しかし、さごとを考えないで一人勝ちしても受け入れられない、という回路でさごとを考える。
自分のしごとで他人が楽して儲けるのは、気持ちの良いものではない。それはたいてい搾取と呼ばれる。だが、それをゼロにしようとするとしごとが流れなくなる。さごとの鎖が切れるからだ。
しごとは、交換可能だ。さごとは等価交換できず、増えたり無くなったりする。
良いさごとは、経済効果が高い。というより、経済効果はさごとの別の言い方だ。
さごとは遊びだから、「暮らしに役立つ」というような座標軸をもたない。だから、さごとには悪い遊びも生じる。無益でも凶悪でも、さごとになる。
承前:
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3
コメント
2007年02月26日
20:16
smi
承前よりは、わかってきたような。
でも、まだもどかしい。
今後の議論の展開に注目しています。
2007年02月26日
20:35
悠
「さごと」という表現、かわいくていいですね。
MS-Windows はどの程度「しごと」だったのか、「さごと」だったのか、考えてしまいました。結構「さごと」何ですけどね。
2007年02月26日
23:23
安斎利洋
>結構「さごと」何ですけどね。
MSプロダクツは、結果的に「さごと」ですよね。狙ってるわけじゃないと思うけれど、意味のなくなった種もいっぱい撒いてるし。きっちりとしたOSは、逆説的に経済効率が小さい「しごと」なのかもしれない。
2007年02月26日
23:57
健
Cシャツのコンセプトをもとに、さごとのプラットフォームとして、いきなり大規模に展開しようと現在計画中です。安斎さんにもお力貸してもらうかもしれませんので、そのときはよろしくお願いします。
2007年02月27日
00:24
安斎利洋
いいですねー、その生産力。
さごと的な概念を、外在化させるのは難しいですね。
貨幣と同じように、はじめは重さがあったほうがいいのかな。
2007年02月27日
01:37
さごと、しごと。
次はやっぱり「すごと」ですか?
2007年02月27日
03:53
安斎利洋
後退すると、ただの小言になる。
2007年02月27日
06:31
小林龍生
「鎖事」ねえ。
ぼくは、ジャストシステムを退社したとき、自分のexpertiseは何かって、結構真剣に考えたのね。
結論は、ソフトウェアの知識でもなく、文字コードの知識でもなく、《人と人を結びつける能力》。
ぼくは、鎖事師としての自分に、すごく誇りを持っている。
《詐事師》ではないので、念のため。
2007年02月27日
06:55
中村理恵子
>、《人と人を結びつける能力》。
はい、小林さんのさごとのおかげで、人や、事や、モノに出会っていいしごとに成ったものが多々。多謝多謝。ときにはそのさごとが目前を通過して他の仲間にリンクしたりして、孫さごと化して機能していったりして。
さごととしごと、しごととさご、ネットのなかでリンクする先々で変化してくようにも思います。
2007年02月27日
07:45
smi
さごとをキーボードで打つと差ごとに変換される。
さごとってディファレンシャル?
人⇔人の微分化?
ただのことばあそびですけど。
2007年02月27日
11:21
小林龍生
>ときにはそのさごとが目前を通過して他の仲間にリンクしたりして、孫さごと化して機能していったりして。
そう。これも鎖事師の醍醐味だね。
自分が結びつけた人同士が、自分のあずかり知らないところで生産的な仕事をしていたりすると、ワクワクする。
2007年02月27日
13:53
>後退すると、ただの小言になる。
けごと(怪事、毛事)や
きごと(奇事、気事)もたのしげです。
>さごとってディファレンシャル?
人⇔人の微分化?
些事や作事もありますね。
事は目的語と目的動詞になるからひろがりますね。
2007年02月28日
02:55
安斎利洋
脳内辞書が、すっかり「さごと=詐事」になってしまったじゃないか。
小林さんが人間マッシュアップの天才であることは、認めます。非常に恩恵を受けたので。
AとBを会わせると錬金術が起きる、っていうような直感なんでしょう。
AとCを会わせると悪いことが起きそう、なんて直感もあるんでしょうか、
2007年02月28日
06:18
小林龍生
>AとCを会わせると悪いことが起きそう、なんて直感もあるんでしょうか、
ぼくの思考過程は、《ぼくと気の合う奴同士は気が合う》《ぼくが気に入った奴同士は相互に気に入る》という、非常に自己チュー的なものなわけです。
というわけで、そもそも、ぼくが気に入らない奴同士がどうなろうと、知ったこっちゃないワケですね。へへへ。
2007年02月28日
06:33
中村理恵子
小林龍生さん、昨夜渋谷の魚の旨い呑み屋で、かつてジャストの中尾さん(ご夫妻)にバッタリ会いました。
何年ぶりだろう。
こんな話をしていたせいでしょうか?
さごとさごとと念仏が聞こえてきました(笑)。
2007年03月01日
02:24
安斎利洋
>ぼくが気に入らない奴同士がどうなろうと、知ったこっちゃないワケですね。へへへ。
小林さんの美点は、鎖事っていうより、このわかりやすいところですよ。
2007年03月01日
07:12
小林龍生
>小林さんの美点は、鎖事っていうより、このわかりやすいところですよ。
ま、瑣事にはこだわらない、ということで。
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