安斎利洋の日記
2007年02月14日
16:18
アーティストとデザイナー
アーティストとデザイナーの違いはなにか、という世界一不毛な議論があり、何度か巻き込まれたことかある。直木賞と芥川賞の違いが本質的だと思っている人にとっては、重大な問題かもしれないが、そういうことに関心のない人にとってはまったく無意味な議論だ。
なぜ、この分類法が生き延びているかというと、元凶は美大の学科なんだろうけれど、今後のために両者を分節化する個人的な基準を思いついた。それは、どちらもインフルエンザだが、デザイナーはヒトインフルエンザで、アーティストは鳥インフルエンザ、という喩え。
鳥インフルエンザは、ヒトからヒトへ感染するように変異したとき、パンデミック(感染爆発)を引き起こす。このときインフルエンザは自己矛盾に曝されていて、感染力と毒性の強い株は、ホスト=運び手を殺してしまい、伝播しない。
ウィルスとして落ち着くためには、宿主の免疫と渡り合いながら共存する必要がある。そこで、ヒトを殺しきる尖った毒性はいずれ淘汰され、やがてヒトインフルエンザとして定着する。
パンデミックフルーは自己矛盾そのものを原動力とするので、一瞬の隙を衝いて現れ、やがて効力を失い、記憶になる。一瞬というのは、およそ2週間。スペイン風邪が鳥インフルエンザから変異して感染爆発したとき、この2週間をうまくやりすごした町はほとんど死者を出さなかったが、何も対策しなかった町は爆発的な死者を出した。
アーティストは2週間を生き、デザイナーは3週間目から後を生きる。
明瞭だ。
コメント
2007年02月14日
18:37
みやばら
ユニットだと、アーティストとデザイナーの役割があるように思います。私たちだけかな。
2007年02月14日
18:49
大和田龍夫
どちらで生きようとするかで、
大学で学ぶことは違うようですし、
就職するしないなど(不毛な)議論もあるのかと(笑)
美大とて就職率を気にする時代ってのが新鮮でした。
2007年02月14日
19:02
なるほど。
アーティストとデザイナーはHA抗原が違うだけなのですね。
2007年02月14日
19:07
かずし
その愚問をする人には、その説明は難しくないですか?:-)
2007年02月14日
19:45
ヒガキ
私は専門学校のときに先生から
「デザイナーとはクライアントと〆切りがある職業の名前」
「アーティストとは生き方そのもの」
といわれました。
2007年02月14日
19:59
安斎利洋
>「デザイナーとはクライアントと〆切りがある職業の名前」
>「アーティストとは生き方そのもの」
ヒガキさんの先生のおっしゃっているのが、たぶん世間一般に信じられている考え方で、そのポーズに沿って生きている人も多いと思うんですが、そうじゃないんじゃないかと、いつも思うんです。
自画自賛ながらインフルエンザがうまい比喩だと思うのは、アーティストとデザイナーの違いは世間の反応が激烈が穏やかかという相対的な位置だけで、それを除けばいずれもただの風邪だ、というところ。
だから、アーティストも社会的な締め切りがあり、デザイナーが生き方そのものじゃないと、それぞれホンモノになれない。
2007年02月14日
20:19
安斎利洋
>ユニットだと、アーティストとデザイナーの役割があるように思います。
>私たちだけかな。
私たちは違います。
>どちらで生きようとするかで、
>大学で学ぶことは違うようですし、
ここが分かれるいるのが、ともかく問題なんだと思います。
>HA抗原が違うだけなのですね。
ウィルスは、自分の進路を決めたりしないのが潔い。
>その愚問をする人には、その説明は難しくないですか?:-)
その愚問をする人は、もう突然変異しないから放っておけばいいのです。
2007年02月14日
21:11
べてぃ☆
タミフル(ギャラ)が効かないのも、アーティストです。
嗚呼。
(毎月悩まされてますw)
2007年02月14日
21:21
安斎利洋
僕は、タミフル受け付けてますので、よろしく。
2007年02月14日
21:43
WAKU
鳥インフルエンザですか。なるほど。
自分はデザイナーとして飯を食ってますが
仲間からはアーティスト扱いされます。
それは毒性が強いからですね。
ま、デジタルだとデザイナーが生まれたころの社会背景と違いますから「量産品の設計をするのがデザイナー」という区分も難しくなっているし、どっちでも良いですけど。
2007年02月14日
21:48
安斎利洋
>毒性が強いからですね。
ほとんどの鳥インフルエンザは人から人に伝染せず、伝染しはじめるとまたたくまにヒトインフルエンザになるので、毒性の強いアートというのは奇跡のような確率でしか存在しません。
2007年02月14日
21:52
H.耕馬
>僕は、タミフル受け付けてますので、よろしく。
そりゃ、副職でやってる「教祖」の方でしょ:-P
2007年02月14日
22:19
安斎利洋
お布施おくれ。
2007年02月14日
23:28
ikeg
デザイナーがアーティストになることはたまにあっても、逆はないのか。
2007年02月14日
23:34
TODO
「お宝鑑定団」という番組があります。けっこう好きで見てます。焼き物の鑑定で「これは工芸品ですね」とかいって値踏みが安かったりする。
対局に「芸術品」というのがあるんでしょうね。私には意味のないことですが何しろ買い手があるなしで決まる世界だから区別が必要なのかなと思っています。でも分かりやすい。価値が値付けだけだから。いろいろもっともらしいことを言うけれど司会の伸介が体現しています。これなんぼ?
2007年02月14日
23:48
安斎利洋
>逆はないのか。
アーティストに「デザイナーの仕事だね」というと、ほとんど怒るでしょうね。
2007年02月14日
23:53
MERC
突然変異したての毒性の強い致死性ウィルスも、やがては宿主との共存の道を模索し弱毒生の(でも、やっかいものの)ウィルスに変貌していきます。
そのうち、宿主のDNAそのものに組み込まれてしまうものも出てくる始末。
毒の強い芸術作品も、やがて普遍的な人類共有の遺伝子の一部と化す日がくるのでしょう。
2007年02月14日
23:56
かずし
> アーティストに「デザイナーの仕事だね」というと、ほとんど怒るでしょうね。
この文章はアーティストは稀有であるという定義がすでにあることがミソですね。
2007年02月14日
23:57
安斎利洋
>これは工芸品ですね
クラフトとアートというのは、また別な対立軸ですね。
アーティストの作った陶器は、ひびが入っても許されるし、メディアアーティストの作ったプログラムは、バグがあっても許される(?)。
2007年02月14日
23:59
安斎利洋
>やがて普遍的な人類共有の遺伝子の一部と化す日がくるのでしょう。
そんなウィルスに、私はなりたい。
2007年02月15日
00:00
安斎利洋
>アーティストは稀有であるという定義がすでにあることがミソですね。
でも、デザイナーの世界で「これじゃアーティストの仕事だよ」というと、これまた悪口になります。
2007年02月15日
02:49
ヒガキ
>それを除けばいずれもただの風邪
なるほど。ウイルスだけは人を差別をしない、というわけですか。
特効薬がない程のウイルスならもう、感染するしかないですね。
そんなウイルスならかかってみたいものです。死んでもいいです
2007年02月15日
03:34
安斎利洋
この比喩に限れば、死んでみたいですね。
でも本当の鳥インフルエンザのパンデミックについては、みなさん2週間じっと引きこもって生き延びましょう。
2007年02月15日
07:56
smi
アーティスト〉デザイナーという図式のアーティストの向こう側に犯罪者という極限状態があるのではないでしょうか? アーティストは犯罪者を指向しつつもギリギリのところでふみとどまり、または一瞬犯罪者になってまた元に戻って来る。 向こう側に行ってしまうリスクを覚悟して仕事する。アーティストがアーティストである時間は一瞬なのかもしれない。 そんな生きかた自分には絶対無理。
2007年02月15日
15:12
びすけっと
なんか懐かしい議論です.僕も,もしかしたらこの質問をしてたかもしれない.
たとえば,どっかに画期的な美術館ができたとします.で,アーティストがワーッと集まってきて,すごい華やかになるんだけど,採算が合わないので,その美術館はつぶれてしまいます.
デザイナーにたかられるような美術館だと,ときどき赤字になるぐらいだけど,ながいこと運営してられる.
という話ですか?
2007年02月15日
17:01
安斎利洋
スペイン風邪が猛威を振るったのは2週間ですが、スペイン風邪の記憶は永遠に残るでしょう。デュシャンが猛威を振るったのも2週間(これ比喩的時間です)ですが、デュシャンの残した傷のアーカイブは美術館に残る。デザイナーの仕事が永遠に残る場所は、美術館じゃなくて日常空間。
という話じゃないでしょうか。
2007年02月15日
17:32
安斎利洋
>そんな生きかた自分には絶対無理。
どうしてそういう冗談を言えるのか...
smiさんの犯罪的な作品が作動しはじめましたね。
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41655
2007年02月15日
19:31
smi
>どうしてそういう冗談を言えるのか...
いや、いや、僕はアマチュアですから。
安斎さんのアーティスト=トリインフルエンザ説でいえば、
スギ花粉ですよ。
「あれ風邪?」っておもったら花粉症だったっていう。。。
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