安斎利洋の日記全体に公開

2006年12月20日
01:00
 【誰か教えて】13世紀の解剖図
「13世紀の解剖図、骨格」というキャプションのついたこの図の出典がわからない。

写真

以下の本の中で、ヴェサリウス以前の解剖図がいかに稚拙であったかという例証になっているんだけれど、出典が記されていない。どなたかご存知の方、教えてください。

『謎の解剖学者ヴェサリウス』坂井建雄
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4480042326

なんか気になるなー、この絵。頭のところにスリーダイアがあって、もしかすると三菱のロボットの設計図がタイムスリップしたのでは、なんて想像もふくらむ。「骨格」以外が見たいなと思ってgoogleしているんだけれど、なかなか発見できず。

そのかわり、ヴェサリウスの高精細な画像が納められたPDFを発見。プリントしてみるとすごさがわかる。
http://www.lib.nakamura-u.ac.jp/yogaku/anatomy/head.htm
 の中にある、
http://www.lib.nakamura-u.ac.jp/yogaku/anatomy/ves/v1.pdf
http://www.lib.nakamura-u.ac.jp/yogaku/anatomy/ves/v2.pdf
http://www.lib.nakamura-u.ac.jp/yogaku/anatomy/ves/v3.pdf
http://www.lib.nakamura-u.ac.jp/yogaku/anatomy/ves/v4.pdf
すばらしい。
 

コメント    

2006年12月20日
01:40
イトカワ
すごいですねー!これ。頭が三菱なんですね。
2006年12月20日
02:34
安斎利洋
三菱の起源が、これかもしれないね。
2006年12月20日
02:45
SYNDI
人体の不思議展を思い出しました。
下のリンクにあるような絵が本物の標本として林立していた・・・。

最初の絵・・・チャーミングだけど、どうしてこうなったのだろう?
2006年12月20日
03:09
はらこ
うちの相方ならわかるかなぁ…?
科学史屋さんにも知り合いいそうだし

明日帰国するので聞いてみます。

中世はアラビアのほうが医学進んでいたはずだけど、
そっちには緻密な解剖図って無いのかなぁ…
2006年12月20日
03:47
安斎利洋
>チャーミングだけど、どうしてこうなったのだろう?

チャーミングですね。なにか心に響きます。
ヴェサリウスの写実を基準にすると、まるで何も見ないで描いた稚拙な絵、ってことになってしまうけれど、ニュートンの色彩論に対するゲーテの色彩論のように、これは自分のうちなるイメージとしての自分の骨なんじゃないか。それを確かめたくて、出所を探し始めたわけなんですが。

>明日帰国するので聞いてみます

ぜひ、聞いてみてください。
2006年12月20日
07:43
中村理恵子
>ヴェサリウスの高精細な画像が納められたPDFを発見。
http://www.lib.nakamura-u.ac.jp/yogaku/anatomy/head.htm

中村学園ってもんがあるんですね(笑・ってぜんぜん本題と違うけどさ。親戚じゃなぁないな残念だけど、福岡だしさ。)。

しかしこのwebの資料にあるヴェサリウスってのひとは、16Cの人なんだね?
>ヨーロッパの2冊の解剖書から解剖図を撮影して本ウェブに掲載することにした。
>1冊はAndreas Vesalius (1514〜1564)の有名なファブリカの第2版(1555)である。

ちょうど日本は、室町時代、”1543年種子島にポルトガル船漂着キリスト教を伝える/信長上洛”なんてあるし、ヨーロッパは、ルネッサンスだね。
日本的には、この時代の人が、日本の13Cを眺めたとすると鎌倉時代”蒙古襲来”の頃か,,,,(って、これまたぜんぜん違う脈絡に脱線。大変失礼)。
2006年12月20日
18:46
安斎利洋
日本との関係というと、ヴェサリウスよりも下って『ターヘルアナトミア』を杉田玄白が『解体新書』に翻訳したのが18世紀末だそうで。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A7%A3%E4%BD%93%E6%96%B0%E6%9B%B8
この数百年の医学の進歩を考えると、3000年ごろの人間は絶対にもう人間じゃないね。
2006年12月20日
19:08
にしの
三菱図では、腰椎、頸椎や手足の指と肋骨の骨の数は、絵がおおざっばなわりに正確ですね。
それにしては、二本あるのがすぐわかる下腕と脚の骨が一本だったりするのは変ですけど。おもしろいです。
もとい、初めてみました。お役に立てずすみません。
2006年12月20日
21:30
たんぎー
アイヌ叙事詩の伝統的な修辞では、人間の内臓は何本かのヒモになっている。戦いになるとそいつをぶちぶち引きちぎりあっています。彼らは実際に動物の解剖学的知識もあるし、人間についてもよく知っていた。それでもそういう単純化した形容をしていた。

ヨーロッパ中世の解剖図も一種のマンガですよね。しかもお互い多少違っていても気にしない。彼らだって、知識としては知っていたはずなのに描かなかった。「写実」という概念がどれだけ特殊なものか、愕然としてしまう。

それにしても件の図はネット上には転がっていないみたいですね。
2006年12月20日
21:44
東京大学の蔵書検索で
https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac-query
Vesalius
ヴェザリウスを検索すると10件かかりました。
東京大学は学外であっても研究者や、学内の紹介状があれば
借りられるはずです。
2006年12月20日
22:44
安斎利洋
>「写実」という概念がどれだけ特殊なものか

そうなんですよ。人骨を見るチャンスは13世紀にも頻繁にあったはずで、なんら秘匿されたものじゃなかったはず。むしろ絵が網膜の写しであるのは、特殊なことだと考えるべきですよね。

>ヴェザリウスを検索すると10件かかりました。

さすがに、ファブリカの古書は貸し出さないだろうな。
2006年12月21日
00:50
安斎利洋
>二本あるのがすぐわかる下腕と脚の骨が一本だったりする

やはりロボットの設計図か。
2006年12月21日
06:19
naom
はじめまして。 SYNDIさんに薦められて来ました。
(初めてお邪魔するのに、長文ですみません。)
元絵となったと思われる同じような中世の解剖図が下にあります。
http://www.stanford.edu/class/history13/earlysciencelab/body/skeletonpages/skeleton.html
http://www.stanford.edu/class/history13/earlysciencelab/body/skeletonpages/medskele127.gif
# 13世紀といえば、アラビア経由でガレノス解剖学が
   翻訳紹介された時代だったと思いますので、
   その翻訳の一つじゃないでしょうか。 (案外、Canonとか・・・)

これと比べると判りますが、「三菱マーク」は、多分、「顔の反転」 ですね? その上の長方形と合わせて、目と鼻と口を反転して簡略化したみたいです。 14世紀のペルシャ人で Mansur ibn Ilyas という人の本にも似た絵がありました。 反転顔は、少し三菱に近くなっています。
"Tashrih-i badan-i insan"
http://www.nlm.nih.gov/exhibition/islamic_medical/islamic_10.html#image25
http://www.nlm.nih.gov/exhibition/historicalanatomies/Images/1200_pixels/p1812b.jpg

なお、ヴェサリウスの解剖図の幾つかは、ロジェ・カイヨワの 『幻想のさなかに』 という本でも論じられていました。 (名前は、フランス語読みか? ヴェザールでしたが。。。)
2006年12月21日
08:16
中村理恵子
naom さん、
> 14世紀のペルシャ人で Mansur ibn Ilyas という人の本にも似た絵がありました。 反転顔は、少し三菱に近くなっています。
http://www.nlm.nih.gov/exhibition/islamic_medical/islamic_10.html#image25
SYNDIさんとは花より団子の頃からの付き合いです(笑)。この日記の主を差し置いて失礼しますが、データ発掘、すばらしい!
非常に東洋的な、鍼灸や整体の施術で使う経絡図のような印象です。最初の図像なんて;生きて機能してる状態でしかみえないものを当初はイメージしていたのかな?とも思います。

その後どんどん動かぬ人体の探求と分析的になってゆくけど、またやその分析の手を緩めてもっと大きな世界を体の中に見るという過程を経ているような。

2006年12月21日
08:45
SYNDI
ああっ!
お調べ魔人のnaomさんだ!本当にやってくださった!(自分でお勧めしておいたくせに驚く)

どうしてこんなものが発掘できるのか・・・・ひょえー。(技にも驚く)
2006年12月21日
14:47
安斎利洋
naomさん、発掘ありがとうございます。

はじめの三菱図も、おそらくイスラムのものですね。これが気まぐれなデザインでなく、きわめて様式的な図であるのがわかります。今日で言うなら「萌え」みたいな。

『謎の解剖学者ヴェサリウス』には、このほか15Cのケタム『医学叢書』などが紹介されています。経絡図は、ヴェサリウス的な西洋医学とは接続しない樹の枝なんでしょう。死物として人体を見るところからはじまるヨーロッパの世界観とはまったく違う。

>生きて機能してる状態でしかみえないもの

まさにそういうことです。
2006年12月22日
03:09
naom
過分なお褒め、恐縮です。 (照;) (中村さんもはじめまして)
でも、興味があるものを発掘できたときは嬉しいですね。
では、調子にのって・・・ (< 悪い癖です、ごめんなさい。)

東洋・中洋には、経絡とかチャクラやナディがありますが、西洋には、人体とコスモスの照応というのがありますよね。 実は、先のサイトには、安斎さんの挙げられたケタムの 『医学叢書』 も載っていて、その中に、黄道十二宮と人体部位の照応を描いた 「獣帯人間 (zodiac man)」 の図がありました。 中世ではよく見られた象徴だそうです。 (そのヴェサリウス本にも載っていたかもしれません・・・)
"Historical Anatomies on the Web"
http://www.nlm.nih.gov/exhibition/historicalanatomies/browse.html
「経絡人間」 対 「獣帯人間」
(Shou Hua 『十四経発揮』 vs Johannes de Ketham 『医学叢書』)
http://www.nlm.nih.gov/exhibition/historicalanatomies/Images/1200_pixels/hua_t09.jpg
http://www.nlm.nih.gov/exhibition/historicalanatomies/Images/1200_pixels/ketham_p15.jpg

それにしても、「萌え」 のような様式って、、、
何かすごそうですね、どんな感じでしょうか? (笑)
2006年12月22日
05:16
安斎利洋
naomさん、このサイト宝の山ですね。デューラーもある。解体新書もある。

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