| 安斎利洋の日記 | |
|
| 2004年10月17日 18:19 | 石を削るような言葉 | UTADAがアメリカでなかなか売れないという話を聞いて、武満徹が初めてハリウッド映画に音楽をつけた『ライジング・サン』の惨憺たる結果を思い出した。
石を削るように、という言葉を武満はよく使う。ある映像にある音をつける。そういう加算的な方法をとらず、湧き上がってくる無数の音から音を削っていくことで、武満は音楽を作り続けてきた。それが、ハリウッドの稚拙な文化には理解しきれない。そして、音が鳴りっぱなしの映画が仕上がった。
武満は黙ることが上手な作曲家だった。
mixiから日々飛び込んでくるたくさんの人たちのたくさんの会話、たとえばムクドリの大群の話だったり、台風の話だったり、スパイスの話だったり、そういう日常の豊かさに、ときどき言葉を失うほど心を動かされる。言葉を失うことに賞賛の言葉を埋めていくのは、実は簡単だ。難しいのは、上手に言葉を失うことだ。
武満はオペラに意欲を燃やしていたが、思いが遂げられることはなかった。武満の音楽を素材にしたオペラ『武満徹〜マイ・ウェイ・オブ・ライフ』が、パリ・シャトレ座で上演され、東京にもやってくる。『ライジング・サン』になっていないことを、祈りたい。
| | |
|