| 安斎利洋の日記 | |
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| 2004年09月11日 02:33 | 食事の反復形式 | | バッハの時代の器楽曲には、AABBというように前半2回繰り返し、後半2回繰り返す形式のものが多いけれど、グレン・グールドはこれをABと各一回で終わらせる。なぜ?と聞かれて、「同じ戦いはしたくない」と答えたらしい(記憶違いがあるかも)。
人間は、繰り返しが好きで、繰り返しが嫌いだ。反復は音楽の命であり、命とりでもある。ヒット曲は聞いていくうちにどんどん頭から離れなくなり、どんどん飽きていく。
食事も、昼にカレーを食べたら晩にカレーは食べたくない。しかし僕の妹の家では、毎朝同じようにトーストと卵とミルクだ。そんな味気ない生活よくやってられるな、と言いながら、僕もよく考えてみると毎朝同じようにパスタの時期があったり、毎朝玄米に塩鮭だったりする。
夜食をとると、次の日も同じ時刻に夜食が食えるものとして体が待ち構えるみたいだ。注意したほうがいい。昨日の朝食べたトマトスパゲティを、今日もまったく同じように作ってみた。ぜんぜん飽きていない。でもきっと、明日は作らない。
絵の中にデジタルでコピーした反復を見つけると、僕はかなりがっかりする。カーテンの反復模様も。ごまかしの無限は嫌いだ。が、マンデルブロ集合を一生見ていろと言われたら、無限の多様性を前にしながら同じような景色に飽き飽きするだろう。
M・フェルドマンの弦楽四重奏曲第二番は非常に長い。FLUXクァルテットが6時間7分かけた演奏のDVDを、mp3にしたら860Mバイトになった。単調な反復のようでいて、一度として同じ繰り返しがない。サティの「いやがらせ」とはわけが違う。何度聴いても、トマトスパゲティのように発見がある。
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