安斎利洋の日記
2005年04月18日
00:58
物の発明、方法の発明
C−NETで鋭いBlogを書いている
kenn
さんに、発言を引用していただいた。感謝!
特許における「発明」とは何か
http://
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m/kenn
/archi
ves/00
2055.h
tml
特許は「物の発明」にだけ適応されるべきだという、元特許庁審判長の丸山光信さんの
論旨
はきわめて明快だ。しかしまてよ、人工物も自然も生命も記号的にとらえようとする現代的な文脈のなかで、この二元論は有効だろうか。なにか本質的なところで腑に落ちないぞ。
と思いつつ、でもいいのだよこれで。特許は厳密なフィロソフィーではなく、製造業を賦活するゲームのためのルールなのだった。このくらい潔い単純さが、特許の議論には必要だ。
コメント
2005年04月18日
01:29
社長
もう誰かが言っていることかもしれませんが、
GUIに対して「意匠」を認めてないので一太郎みたいな問題が起こるということもあるんですよね。
特許で押さえるしかないんです。
だから、こういう混乱になったともいえる。
つまり、元はといえば特許庁の怠慢ということもいえなくもない。
最近は一応「機器に表示していれば、外側と一緒にして意匠として認められる」みたいな考え方になったらしく、
外形の枠を描いて、意匠として申請するという
アホみたいなことをさせられてますけど。
これってどうなんですかねぇ。
2005年04月18日
01:48
安斎利洋
GUIは、もはやメッセージだから、著作権でもいいんじゃないでしょうか。登録なんぞしなくても自然発生して、よっぽどそのまんま真似されたら訴訟を起こす。似ているのはOKにする。だって、UIが似てなかったら、ユーザーは地獄ですから。
2005年04月18日
02:11
社長
難しいのは、シンボルとしての側面と、工業デザインとしての側面があるということですね。
工業デザインは、著作権じゃなくて、意匠扱いなんですよ。
シンボルは、「業界標準」として共有するということであれば問題ないんですし、やってることですけど。
一太郎問題は、シンボルとして知の共有をすべきところを、はき違えてるorすりかえてるようなところに問題がある気もします。
「著作権として扱う」という宣言を、アメリカと日本、EUあたりが同時にやれば、世の中変わるかもしれないです。
そうすれば、音楽の世界でサンプリングネタを使用するのも「作品」として認められるようになったのと、同じようなことが起こるかも。
まぁアジアは相変わらず無法地帯かも、ですが。
2005年04月18日
02:54
安斎利洋
この前、PENCKのフォントが盗作だったというのがありました。
http://
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media.
co.jp/
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/artic
les/05
03/29/
news04
4.html
これなんか、やっぱパクったヤツは、自分でフォントを起こせよ、と思いますね。たかだかテンキーの数なんだから。仕事に対する粘りに欠けてるよ。
アイコンのデザインとかフォントは、意匠扱いになっても、僕は抵抗ありません。踏まないようにすれば、新しいものが生まれるだろうから、世のためになる。
商標登録は、業種が違うと重なってもOKなんですよね。意匠登録はどうなんろう。つまり、こういうのって名前空間と等価な問題であって、つまり平面の塗りわけと等価だから合理的なんです。
ソフトウェアの特許は、根こそぎ持っていけるルールがまずいんですね。
2005年04月18日
10:03
imochang
>商標登録は、業種が違うと重なってもOKなんですよね。意匠登録はどうなんろう。
私が和菓子屋に勤めていた頃の話なので、ものすごく昔(十五年近く前)の話としてお聞きください。
今は規則が変わっているかもしれません。
登録商標は、業種が異なるとオッケーです。
意匠登録に関しては、その度合いによって、かなりケース・バイ・ケースになりますが、イタチごっこの感覚はぬぐえませんでした。
あと、同じ業界の中でも、登録商標や意匠登録の売買は、裏で横行しています。
廃業した和菓子屋が「のれん」を売り渡す例もありますからね。
そのとき、その「のれん」に付随していた各種の権利、そして知名度やブランド力なども売られるということになります。
「のれん分け」と「のれんを売る」ということは根本的に違うことです。
それから、和菓子業界は、特許や登録商標などといった概念の成立前から存在してますので、店の看板商品であっても、登録商標をとれないというケースが多々あります。
たとえば「よもぎ餅」など素材の名がそのまま商品名になってるようなケースでは、登録商標はとれません。
じゃあ、どうするか?
パッケージのデザインとともに、意匠登録をとるのです。
古い和菓子屋などでは、有名日本画家に依頼して、パッケージの絵や意匠を書いていただいたものも少なくありません。
また、有名書家の揮毫してくださった菓子名のロゴタイプで、意匠登録をとるケースもあります。
かなり、いろんな術をつくして、おさえていきます。
で、面白いのは、外側のパッケージやお菓子の名前は、こうやって保護できるのに、肝心の「中の菓子の味」や「素材の取合せのアイデア」などは、押さえられない・・・ということです。
よほど特殊な技法を使ったものに関しては、その技術に関して特許を申請しますが、効果は薄いですね。
普通、熟練の職人さんなら、よほどのものでない限り、味は再現できるのです。
もちろん、どうしてもできないものもありますが、そういうものに関しては、シンプルに敬意を払います。
かなり、ジャンルもレベルも違う話を書き込みましたが、肝心の「味覚」の部分に特許がないあたり、ソフトウェアの問題と、どこかでつながっているような気がしました。
一言で言えば、換骨奪胎というヤツでしょうか・・・
2005年04月18日
10:55
社長
Penckの話は、
ちゃんと「足立さんのフォントが気に入ったから使わせていただきました」って宣言しておけば、
お互いRespectの関係になっていたんじゃないでしょうか。
申し訳ないけど、会社の広報関係の人は、
もっと繊細になってほしいと思う。
(どこの会社もです。)
2005年04月18日
12:27
yukio.andoh
Penckの話は、根本のスタートの認識に違いがあるのです。
印刷物や、Web ページなら既存のコンピュータフォントを
使うことが多いかもしれませんが、
プロダクトとして莫大なデザイン費用をかけているもの
(ましてや Penck はデザインコンシャスなプロダクト)で
専用に適切・的確なフォントをおこさないということは
手を抜いているとしか思えません。
フォントは長い歴史の上で、何系統かに分類でき、
確かに似ているフォントが生まれやすいのは確かです。
今回の Penckの話を聞いて、
「気に入って使わせていただいた」だけじゃない
悲しさを感じてしまったのは確かです。
ちょっと辛口になってしまいましたが、
コンピュータが便利になってきた弊害として
このあたりを再考しても良いかと。
2005年04月18日
16:17
安斎利洋
昔、「日経コミュニケーション」誌の表紙をずっと描いていましたが、あの雑誌の題字はフォントです。何度も「変えようよ、作ろうよ」と提案したんだけれど、題字を変えるのは編集部内の判断じゃできないし、けっこうすっきりしていてみんな気にいってるってことで、そのままでした。
でも、デザインには絶対フォントを使っちゃいけないところって、あると思うんだよね。たとえば空気清浄機の「風量」なんていう表示はフォントでいいんだけれど、ロゴタイプのように顔になるところは、いままでこの世にないユニークなアイデンティティをもちたいと思うのが、デザイナーの意地じゃないかな、と、パクリの創造性を全肯定している僕としても、そう思います。
デンキーのキートップなんて、きっと普通はフォントなんでしょうけれど、 「関わった人たちの誰1人が欠けてもPENCKはできなかった。チームワークと根性で作った」(小牟田氏)
http://
www.it
media.
co.jp/
mobile
/artic
les/05
02/24/
news01
8.html
なんていう意気込みがあるプロダクトなんだから、無断借用したフォントの作者の名前が、一人欠けてました、っていうのは実にカッコ悪いな。
2005年04月18日
18:55
安斎利洋
>Penckの話は、
>ちゃんと「足立さんのフォントが気に入ったから
>使わせていただきました」って宣言しておけば、
これ読んで思ったんだけど、ケータイをハードウェアや工業デザインまで含めてオープンソースで作る、なんてことをやったら、当たるんじゃないかな。
2005年04月19日
00:04
社長
誤解があるといけないんで書いておきますが、
やっぱり、プロダクト作って儲けるんだから、
フリーとはいえ、著作者にお金を払うのがベストです。
そんなわけで、サンプリングの例も出したんです。
メジャーから発売されるものは、ネタ代払ってますよね。
ただ、もし事前にちゃんとサイトウさんと足立さんがコミュニケートしていたら、こんなひどいことにはならなかったんじゃないかということなんです。
クリエーターって本来は
お互い認め合えたら、
やさしくなれる人種じゃないでしょうか。
というか、そう信じたい。
自分も同業だから。
2005年04月19日
02:22
安斎利洋
>こんなひどいことにはならなかったんじゃないか
確かにそうですね。
この一件は、もうひとつ、パブリックドメインに供するフリーウェアの曖昧さも問題だと思います。著作権フリーなのか、使用料フリーなのか、よくわからない。あとで文句言うくらいなら、商業利用する場合の規定を明示しておくべきです。潔く手離れしていないのに、フリーと称してばら撒いているのは、僕は好きじゃないな。だったらちゃんと売ってほしい。
使う方も、普通の商習慣で事前にアクセスできれば、単純に買ってきたでしょうし、それも惜しければ自分で作っただろうし。
2005年04月19日
10:56
びすけっと
> これ読んで思ったんだけど、ケータイをハードウェアや
> 工業デザインまで含めてオープンソースで作る、なんて
> ことをやったら、当たるんじゃないかな。
わたし,これにだまされた口です.
http://
www.re
nya.co
m/komo
no/mor
phy.ht
m
小さいコンピュータをみんなで作ろうってやったやつ.
予約金として8万円払ったんですが,会社を整理して2万円
くらい返ってきて終わりだった.せめて基板と部品だけでも
送ってくれればよかったんですが.基板もバグだらけで
ぜんぜん使い物にならなかったらしいです.
コピーにお金がかからないソフトだから,オープンソース
が気軽にできるってことなんじゃないでしょうか.
2005年04月19日
13:22
安斎利洋
なるほど、これは悲しい結果でしたね。もっとうまい方法があるような気がする。
しかしこの話、物の発明と、ソフトウェアの発明の違いを浮き彫りにしています。ソフトウェアは初期投資として人件費しかいらないから、企業が失敗すると損失が発生するけれど、個人が失敗しても損失は発生しない。物づくりは、失敗は必ず損になる。だから特許が必要なんだ。
はじめの話題に戻れた。
2005年04月19日
16:34
しおざわ
> 潔く手離れしていないのに、フリーと称してばら撒いているのは、僕は好きじゃないな。だったらちゃんと売ってほしい。
ちょっと待ってくださいよ。
素人の趣味でも、流通業者と契約したり(売れそうもないのに)、厳密な使用契約書を用意したりしろってことでしょうか? それに、携帯の数字キーに使われる可能性なんて、あらかじめ想定していなければならないんでしょうか。プロは素人にまで、プロ並みの意気込みを要求しがちですが、そういうのは素人排除的な思想だと私は思います。
というか、それ以前に、ここの議論は、ことの本質を外していると思います。この件の最大の問題点は、PENCKのメーカーやデザイナーが、「フォントも自分たちで、とてもこだわって作った」と宣伝していたことです。少なくともそういう報道を放置していたことです。権利問題以前に、「ウソ」をついて他人の業績を自分の業績にしていたということです。
2005年04月19日
16:50
しおざわ
あと、権利を買ったら本当の作者の名前を消し去って、自分たちで作ったことにしていいのかといったら、そうではないと思います。
世の中には、原作者の名前も書き換えてしまうような契約が当たり前のようにあるかもしれませんが(ゴーストライター等)、本来、誰が作ったかは「事実」であって、売買の対象となる「権利」ではないと思います。
足立氏が何に対して怒りを感じたのか、よく考えるべきだと思います。
2005年04月19日
17:29
安斎利洋
しおざわさん
PENCKについては、無神経かつだらしないのはデザイナー側で、足立さんが怒るのはもっともです。
潔く手離れしていない、というのは一般論で、かつ僕の個人的な感覚です。フォントという再利用が前提である情報を世にフリーで出すということは、自分の嫌いなクズなヤツがそれを使ってクズなコンテキストで使うことは覚悟しなくてはならないと僕は思います。これも足立さん限定の話ではありません。
ところでしおざわさんは、検索機能でここまで来ましたか?
だとしたら、なかなかmixiもスリリングになりましたね。
2005年04月19日
17:36
安斎利洋
>検索機能でここまで来ましたか
失礼しました、「うざい」コミュニティからですね。
2005年04月19日
17:43
しおざわ
某コミュニティで紹介されています。
> 自分の嫌いなクズなヤツがそれを使ってクズなコンテキストで使うことは覚悟しなくてはならない
たとえば、この例では、KDDIやサイトウマコト氏(のどちらか?)が、「クズ」ってことでしょうかね?
ただのクズな素人が使ったのなら、作者も個人的に対応できるでしょうし、経済的利害もほとんどないでしょうし、作者としては覚悟はともかく予想はつくでしょう。
たとえば、私がフリーソフトを公開するとしたら、どこか人が趣味の延長でシェアウェアに組み込むとか、社内のプロトタイプに使われるとか、自営業のでこっそり使われるような可能性を考えないわけではありません。
しかし、大会社や有名デザイナーが、「自分たちで作った」と宣伝しだすようなことは、一般的な覚悟の想定外だと思います。それに対する対抗手段も限られてきます。こういうことが許されるなら、「売ったら済む」という問題ではないと思います。
2005年04月19日
17:48
安斎利洋
>誰が作ったかは「事実」であって、売買の対象となる「権利」ではないと思います。
著作権は、売買できない人格権と、財産権としての知的所有権がまぜこぜに議論されるのがややこしいのですが、penckの問題はまさに、このふたつの権利のずれが、作者とデザイナーの温度差になってしまったのだと思います。
作り手は、ここをしっかり切り分けて明示すべきです。作品性を大事にしたいのか、それすらもいらないアノニマスな部品なのか。料金がいるいらないとは別に、この点を明示する必要があるんじゃないでしょうか。
2005年04月19日
17:50
しおざわ
あと、「無神経かつだらしない」という表現も、どうもしっくりきません。これは、事実の歪曲ですから、過失でなくて故意でしょう。無神経だったりだらしなかったりしたら、嘘をつけるのかってことです。
2005年04月19日
17:53
しおざわ
「アノニマスである」と明言しない限り、アノニマスではないと思いますが。それに、たとえアノニマスでパブリックドメインであっても作者は存在し、タイムマシンで過去に戻って歴史を変えない限り、それが別人になることはありません。
2005年04月19日
18:05
安斎利洋
>過失でなくて故意でしょう
それは本人に聞いてみないと、なんともいえませんね。
フリーのフォントには著作人格権もないだろう、と思い込んでしまうプロの現場の空気っていうのは、あるのかもしれません。
CGの世界だと、マッピングデータがよくこういう問題になります。「素材」という領域をどう意識しているかということかもしれません。
アノニマスでなくなることはない、というのはその通りです。でも、「著作権フリーの素材」と勘違いしてしまわれそうな文脈の中に作品を投げ込むときは、しつこいくらい作品性を主張する努力をしたほうがいいですよ。
2005年04月19日
18:28
しおざわ
> それは本人に聞いてみないと、なんともいえませんね。
それこそ、本人に聞いて分かるかどうかが疑問でしょう。KDDIは、「サイトウマコト氏がこだわって、氏の事務所で手書きで1文字ずつデザインした」と広報していたわけです。サイトウマコト氏がウソをついていないならば、KDDIが聞いてもいないことを創作した物語(つまりウソ)だということになります。
> フリーのフォントには著作人格権もないだろう
そもそも、普通のフォントに著作権はないんじゃないですか? しかし、著作権が適用されないからといって、虚偽申告が許されるんですか? これは明確な「ウソ」ですからね。「権利がないならウソをついていい」というのが業界標準なら、とんでもない業界だと思います。
> 「著作権フリーの素材」と勘違いしてしまわれそうな文脈の中に
私にアドバイスを送るのは筋違いだと思います。ともかく、たとえ著作権がフリーであっても、作者が匿名・非公開・不詳になることはあっても、それが赤の他人になることはないんです。匿名・非公開・不詳と、ウソは違います。
2005年04月19日
18:44
安斎利洋
基本的に、褒められない人たちであったことだけは確かです。
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