安斎利洋の日記全体に公開

2006年05月12日
22:40
 沈み行くmixiからの箱舟
mixiと個人の死の関係についての話題から、平塚事件を掘っていったフォマールさんの日記が、mixi運営者によって手を入れられ、数行を残して削除されてしまった。事件の加害者を、被害者(mixi会員)のマイミクシィの中に憶測する部分があり、それがmixiの規約に違反するということらしい。

憶測は憶測に過ぎないので、それを書くのは軽率であったように思う。が、驚いたのはあまりに簡単に日記と名のついた個人の言説を、いきなり削除するという行為そのものだ。たとえて言うなら、電話をしていたらNTTの職員が「そんな話をするな」と介入してきたような感覚を覚える。

mixiは通信ではないのでこの例は違うかもしれないけれど、ソーシャルネットに対して僕らは、決してニフティのようなパブリックなコミュニティをイメージしていない。「日記」という日本語がweblogの正しい翻訳ではないにしても、「日記」というメタファーからすると、それは自分の皮膚に近いプライベートな位置にあって、他人に手を入れられることなどないと信じている。

mixiがこれだけ大きなネットワークに育ったのは、mixiの仕組みが優れていたわけではない。orkutからSNSをはじめた僕にとってmixiは多くの中のひとつに過ぎなかったし、むしろ設計の弱点や考え方の古さが目立つシステムだ。たまたま雪だるまが大きくなるように人が人を呼ぶ(まさに呼んでくるわけだ)ポジティブフィードバックによって、mixiは大きくなった。mixiの正体はメディアではなく、メンバーのグラフ構造であることをmixi運営者は理解していない。

そういうmixiと喧嘩しても得るものは少ないと思うので、僕はmixiの本体である人のネットワーク構造だけを掬いあげ、mixiの本質をmixiの外に逃がす方法を、いろいろなところで考えるべきだと思っている。

いくつか箱舟の方法を考えた。

1)外のブログをmixiにつなぐ。しかしこれは、世界が一元的に見えないせいか、SNSとして見えてこないので、パス。

2)自分の日記を退避して、mixiと同時に自分のWebサイトに掲載する。日記にコメントをつける人は、そういう前提で書いていないという反論があるかもしれないが、友人に公開、友人の友人まで公開、全体に公開、というレベルの先に、Web全体に公開というレベルがあってもいいわけで、それを宣言するスタイルを作ればいい。
ツールは、http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=6391102&comm_id=43817 などからたどることができる。この方法は富豪家さんがすでにやっている。

3)新しいSNSのプログラムを作る。そのSNSにmixiのID番号を登録すると、mixi経由でpwが送られてくる。やはりmixiのIDで入ってきた友人がいると、新SNSはmixiからマイミク構造やプロフィールや写真を読み取って、勝手にホームページを作り、メンバー間のリンクする。mixiを、たんなる人脈地図提供サービスにしてしまう。


アイデアを募る。

写真この日記とコメントはweb全体に公開されます
 

コメント    

2006年05月12日
22:56
びすけっと
> 電話をしていたらNTTの職員が「そんな話をするな」と
> 介入してきたような感覚を覚える。

電電公社時代に電話工事の人に聞いた話なんですが,電話線の張り替えの工事をするには,その線を使っている会話が全部終了しなきゃ,できないんですって.そんで,夜中にその会話が終わるのを待ってやるわけだけど,夜中の電話だからなかなか終わらない.ひどいときは2時間くらいおじさんたちは寒空のしたで待っているそうです.「電話に割り込んで,ちょっとかけ直してください,って言ったらどうですか」とその人に質問したら,「そんなことできるわけないじゃないですか」と言われました.

あ,mixiの話ですね.実は,ひそかにViscuitLandでmixiを乗っ取ろうと思っていましたが,チャンスは急におとずれましたね.3)の方式そのものです.ただ,いつ出来るかわかりません:-)
2006年05月12日
23:00
Marlbana*
mixigraphを改造して、写真からその写真の持ち主のBlogに飛べるようにする、とか。mixiでは日記を書かないのが前提ですけど。見た目はまるで日記版カンブリアンだから却下でしょうか。。。
2006年05月12日
23:00
安斎利洋
>3)の方式そのものです

やっぱ、考えますよねー。そうだろうとも。
これって、mixiのログをXMLにするようなライブラリをオープンソースでみんなでやったら、いろんな3)タイプのSNSが作れて面白いんじゃないかな。仕様が変わっても、人海戦術で対応できる。
2006年05月12日
23:01
安斎利洋
>見た目はまるで日記版カンブリアンだから却下でしょうか。。。

上のような方法(XMLに落とす)ができれば、カンブリアンそのものをmixi連携にできます。
2006年05月13日
00:32
Stone
>mixiのログをXMLにするようなライブラリをオープンソースでみんなでやったら

たとえば,これとか.
http://www.iburiworks.com/petittools/mixipress.html

私も,mixi内の日記は足跡がみれるぐらいしかメリットがないなと,日記は外部においている派ですが,結局のところmixiとかSNSの本質ってなんでしょうね?
2006年05月13日
00:35
安斎利洋
>結局のところmixiとかSNSの本質ってなんでしょうね?

そこなんですよね、考えなくちゃいけないのは。分散したブログをSNS的に組織化するRSSリーダーで、mixiが代替できるのかどうか。
もし、管理されたサーバーが好きで人が集まっているんだったら、箱舟は座礁する。
2006年05月13日
00:46
xeno
mixi素人の素朴な疑問として、

”ソーシャルネットワーク”と謳って現実のコミュニティを模しているならば、コミュニティの運営・管理はコミュニティのメンバーが行い、内部の問題は、みんなで相談してルールを決めて処理をするべきなのではないでしょうか?
つまり、例えて言うなら、コミュニティ内部のルール違反(罪)は、コミュニティ内に、警察や裁判所の機能を作って、そこで民主的に裁かれて初めて処罰されるわけです。

「mixi管理者」という神あるいは王様のような存在があることがおかしい気がしますね。

(以上のことは、「現実のコミュニティを模している」という仮定に立った理屈であって、実際はおかしくもなんともない。要するにmixiとはその程度のものにしか過ぎないのだろう。)
2006年05月13日
00:57
安斎利洋
僕もそう思います。だからSNSは小宇宙に分散して、ネームサーバーのような形でSNS間のメンバー管理を一元化するサービスを作ればいい。
2006年05月13日
01:19
にしの
いまのところ提供してくれるサービスが使いやすいので広まっているだけだと思います。びすけっとさんなどはこの理由で使っているとおもわれますがいかがでしょうか。そして、逓増の原則で早いもの勝ちになったと。結論から言えばコウイウシステムの存在を知る人が増えた今こそ代替は可能だとおもいます。

その初期の加速度は、コレってカッコ良い…それは簡単には入れないから、というブランディングプロモーションの上手さだったでしょう。

でも、こういうシステムの便利さを知ってなお半閉鎖空間から逃れた人達が多々いて、彼らが行く先を用意するとグッドなタイミングがあるはずです。半閉鎖が嫌で、あえて使わなかった人もあります。
というわけで、私もついこの間まで使ってなかったわけですが、なかなか便利ですね。(^^;
個人的なポリシーで基本的に実名で全公開していますけど…。

追伸:むかし関係していたゲームサーバでも素行の悪いユーザを「キックアウト」する権限でずいぶんもめていました。同じことはパソコン通信の世界でも日常としてありましたし、半閉鎖であるかぎり王様はどうしても出てきちゃいますね。人間の業だと思います。場合によっては必要悪ですし。
2006年05月13日
01:48
安斎利洋
ブログやそSNSは、王様が日記の作者なんじゃないでしょうか。だから、日記を削除するとそのコメントも一式消えてしまうし、退会するとすべてのコメントごと消えてしまう。
そのこと自体、いろいろ問題はあると思うけれど、しかしそれが不文律みたいになっている。日記の上位に運営者がいる、というのは、不文律になっていないからびっくりしてしまう。

にしのさんが言うように、これは矛盾を解消する好機ですね。
2006年05月13日
02:36
ks91
王様のいない wija で是非、解決したいです。
http://www.media-art-online.org/wija/
頑張って開発せねば。
2006年05月13日
02:47
安斎利洋
カンブリアンは、リーフ単位でオーサーが支配して、リーフ内は不可侵です。wijaは、やはり窓ごとに顔があるから、同じモデルですか?
2006年05月13日
06:45
ks91
wija はインスタントメッセージング&プレゼンス共有のソフトウェア (Jabber/XMPP 準拠) で、一般のそういったシステムと同様、各自が知人リストを持ちます。

知人リストがメッセージの経路表として使われる場合は、(オープンソースですからソフトウェアを改ざんすることにより) フォワードするかを選択できますから、最悪、ある個人から向こう側の知人関係は不可侵になります。

ただし、知人リストは固定ではないので、フォワードを拒否する個人の向こう側の人々に、他の知人関係の経路を利用してアクセスできるようになることはあると思います。

以上は知人関係 (メッセージのフォワーディング) についてのお話で、wija でブログ (web ではないですが) のようなものを作るとすると、各自のローカルな日記データに、メッセージのフォワーディングを通してアクセスしていくようなモデルになると思います。

日記へのコメントについては、これからのデザイン次第ですが、ソフトウェアの改ざんの可能性を考慮すると最悪、不可侵、ただし、中継点でのキャッシュを実装すると思いますので完全な不可侵性を実現することは難しいと思います。
2006年05月13日
09:12
びすけっと
僕はmixiは永遠に続くべきだと思って,寄付のつもりでプレミアムに入っていますが(プレミアムの人は皆さんそんな感じですよね),勝手に思い入れを深くしたのが馬鹿だったのかもしれません.でもあの時は,なんとか事業として成り立って欲しいって思ってましたもんね.

にしのさん
> いまのところ提供してくれるサービスが使いやすいので
> 広まっているだけだと思います。
僕はGREEの方が最初でしたが,ダメでした.
僕のmixiの態度は,自分のトップページにも書いてますが,コンピュータは苦手だな,という人と繋がりたい,です.コンピュータが得意な人同士はMLとかいろいろと工夫できますからね.
未来のいろんな問題を考えるときに,感性の豊かな人の声が一番大事だと思いますが,そういう人たちを気軽に誘えそうなインタフェースだったのが,このmixiなわけです.

僕らは検閲は嫌がるけれども,コンピュータがまったくわからない人たちはこれに対してどう感じるのか.
2006年05月13日
10:36
N_apostrophe
>検閲は嫌がるけれども,コンピュータがまったくわからない人たち
に属するものとして:
1、個の責任で発言することについて、「他者の誹謗」を第三者が、権限を持って排除することには危険を感じます。中国政府等のネット介入にみられるネットの虚弱性は、これにコミュニケーションの「ユートピア」を主張するときいつも反論として出されました。
2:中傷、誹謗は世の常。口頭で狭い範囲でなされるか、ネットを使って広がるかの量の問題は変質の可能性があるでしょうが、見ず知らずの人に関係を使って広がるSNSは仲介のないパブリックメディアより公平感があります。
3:発信元を特定できるということについては、発言者の責任として良い点がありますが、個ではない大きな力に弱いと言う危険を感じるので、流言飛語を許容することを選びます。
4:いずれにしろ、陰謀や裏社会のないシステムは危険だというのが民衆の歴史の真実でしょう。
2006年05月13日
15:57
安斎利洋
N_apostropheさんの話を工学的な関心におきかえると、制御系から自律系へのシフトの中で、完全に制御を放棄すべきかどうか、ということだと思います。ピュアp2pは難しいが、ハイブリッドp2pはうまくいく、というような風潮は正しいのか。または、どういうハイブリッドが適当なのか。

その意味でmixiの検閲の話は、googleのやっている「制御」の妥当性の問題ともつながってきます。

「google」の制御の政治性については、佐々木俊尚さん(http://mixi.jp/show_friend.pl?id=1150546)が最近本を出して(http://www.amazon.co.jp/gp/product/4166605011/249-3515816-8483555?v=glance&n=465392 )、それに詳しく書いてあります。小林さんが、日記で書評しています(http://mixi.jp/view_diary.pl?id=133795125&owner_id=80202)。

それから、テロや組織犯罪のない住みやすい世界を作る方法として共謀罪( http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%B1%E8%AC%80%E7%BD%AA )を成立させようとしている動きにも符合する。

一連のそうした流れを、科学的に検証しなおしたほうがいいんじゃないかな。「陰謀や裏社会のないシステムは危険」という逆説をちゃんと証明しておきたい。
2006年05月14日
09:34
びすけっと
mixiの運営側は,わざわざこういうことをやっているということは,それなりに考えてのことなんだと思うのですよ.その考えた方向が若い人たちに受けているというのが,実は重要だったりするんじゃないでしょうか.
2006年05月14日
13:44
安斎利洋
>その考えた方向が若い人たちに受けている

そうなんですかね。その実態は知りたいな。

ニュースを流したり、フォトコンテストをやったり、そういうmixiの企画は、ボトムアップでできた世界にトップダウンを持ち込むやりかたで、僕はSNSにある理想を抱いているので、非常に不愉快なんですけどね。あれがうれしい人は、メジャーなのかな。
2006年05月14日
15:55
びすけっと
mixiの面白いところは,何がメジャーなのかぜんぜんわからないところですよね.安斎さんの周りで起きていることと,僕の周りで起きていることは,かなり近いけどでも少し違う.若い人たちだとぜんぜん想像もつきません.
さっき,カンブリアン宮殿の録画を見たんですが,mixiの笠原さんとはてなの近藤さんが出てて,取材されていたmixiの使われ方はもっとコミュニティを中心とした出会い系っぽかった.
僕らはまずベースに知り合い関係があって,その一部分がmixiに反映されている.紹介系と言ったほうがいいかもしれない.

あと,完全に個人的な感想ですが,はてなの人はちゃんと考えてそうだったけど,mixiの人はそんな印象は受けなかったです.
2006年05月14日
16:49
安斎利洋
笠原さんとは会ってないんでわからないけれど、今回の「事件」は想像するに、思慮のない若い社員がたまたま会員対応をやってるんだろうな、という景色は見えますね。でも、ちょっと覚悟してもらわないと。文化装置をつくっちゃったんだから。近藤さんは会ったことがありますが、それなりに考えのある人だという印象。

それはともかく、びすけっとさんが言うように、mixiになぜ人が集まったのか、というのは分析しておきたいですね。運営の作り上げた危険のない閉域の安心感を理由に集まってきているのか、それとも、人が集まっているから人が集まっているだけなのか。

明らかにブログにつくコメントスレッドより、mixiのほうが密度が高いように思うんだけれど、それはなぜだろう。mixi運営の努力で、スパムのようなの怪しい人影がないからなのか。それともたんに、SNSの仕組みがそうさせているのか。
2006年05月14日
18:43
びすけっと
> mixiになぜ人が集まったのか、というのは分析しておきたいですね。
あるマスを超えたからだけなのだとすると,我々が思う永遠性なんてのは最初から求められていなくて,ブームが去るとみんなは違うものに行くだけでしょうか.

自分の日記にコメントがついたり,メッセージをもらったりするときの赤い字.あれが実は肝だったりして.

> 明らかにブログにつくコメントスレッドより、mixiのほう
> が密度が高いように思うんだけれど、それはなぜだろう。
他人の日記の足跡も見えたら違うだろうか.

Jankaというもっと出会い系っぽいSNSじゃないブログっぽいサイトがあるんですが,あっちは他人のブログの足跡が見れますね.SNSじゃあないので,テレビCMを打てばそれなりにユーザが増えるし,インタフェースもmixi以上に女性向けに作っているんですが,僕らが実名でmixiをやるのとは明らかに違いますね.実名を使わないmixiユーザだったら近いのかもしれません.
2006年05月15日
01:20
安斎利洋
まだmixiの会員が10万人以下だったころだと思うけれど、永続しないだろうという話を書いてました。
「ヲノサトルの先見性と風化するmixi」2004年10月27
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=2852958&owner_id=63253

もし揮発性のメディアだったら、無責任で意味のない言葉を並べてそれで終わりというのでもいいんでしょうけど、僕はそれには興味ないなー。意味のない会話なんて、できないでしょ。
2006年05月15日
01:27
びすけっと
はい.覚えてます.

> 意味のない会話なんて、できないでしょ。

僕らは,濃い会話を繰り広げてますけれど,軽い日記も多いでしょう.レスも軽いし.

神のいない純粋P2PでSNSを作りましょうよ.
2006年05月15日
01:34
安斎利洋
ピュアp2pは、やりたいですね。現実の人間とのマッピングをどう保障するかが難しいですね。幽霊がいっぱい増えそう。過渡的には、インデックスサービスのようなサーバーありでもいいかもしれない。
びすけっとさんは、これ知ってますか?
http://open.affelio.jp/
2006年05月18日
02:40
箱船ほしいですね。
いや、箱船なのか?
何なのかわからないけど。。

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