11日、退官する原島博先生の盛大な最終講義とパーティがあり、三次会までついていく。東大情報学環創設時の教員の会ということらしかったのだけれど、なぜか八谷さんやら草原さんやら中村さんら「アート系」とともに紛れ込み、まるで他人の同窓会で騒いでいるようでもあり、異様に密度の濃い空気の中で目立たぬようでもあり。
原島さんという稀有のトリックスターが、端的に言うと文○省をだまして作った稀有の組織の始まりは、昔話にしても衝撃的。大きなものをぶっこわすには、エレガントなマジックが必要なのだろう。
講演や宴会の中で、なぜかいろいろな人からくりかえし出てきた「人類の幸福」というキーワードが、気になってしかたなかった。この言葉で補完しないと、工学とはなにか、という問いは完結しないのだろう。人類の幸福という至上目的を、分岐構造に分解した小目的が工学の各分野に対応している、という話は、たぶんその通りなんだけれど、しかし芸術も同様に「人類の幸福」に資するといわれれば、そりゃ違うだろ、とアート系が声をあわせる。だってアートは、ときどき不幸を目指すから。
八谷さんに紹介された前田太郎さんと、瞬間的に気持がコネクトする。彼は、まっすぐ歩こうとする人がNTTマークに歩いてしまうヤバいマシンを作ったりする。自分の身体の境界があいまいになるような不幸せを、人類の幸せにだますようなエレガントなマジックが、この異分野接合の環には必要なんだと思う。