安斎利洋の日記全体に公開

2005年03月01日
18:09
 ほりえもんとサルトルとメルプロジェクト
ほりえもんの支持者は圧倒的に50歳台、とANNのニュースにて。なるほど、そうかもしれない。

僕が中学高校の頃、近所の古本屋にはコミック本のように、サルトル全集の投売りが積まれていた。物事の本質に関心をもつ十代のころ、物事には本質substanceなどなく、実存existenceだけが信じうるのだという哲学を、僕は団塊の人々の残した100円均一の残滓の中で浴びた。

人間は十代の頃に受けた思想や文化の影響や、刷り込まれたメディアの文法、権威の構造からからなかなか自由になれない。そうじゃなかったら、もうとっくにテレビは滅びても良いはずだ。ゲーム業界の人に、なんでRPGはいつまでたってもアイテムだハートだ戦いだ、なんだ、というと、それは文法を外したゲームが売れた試しがないからだと言う。ゲーム脳というのは信じないが、ゲームマニアは保守的だと思う。彼らはなかなか、自分の外に立つ(ex-sist)ことができない。

先週のメルのシンポジウムで(時間がなくて話が中座してしまったけれど)議論したかったのはこのことだ。僕が水越伸さんを信頼している理由のひとつは、彼のラジオメディア成立に関する研究の見事さだ。ラジオ放送が成立した背景には、どこにもラジオ放送を意図した引力がない。交信に飽きたアマチュア無線家が、ひとり一方的にDJを始める。リスナーが増えていく。通信機メーカーが販促用にDJを始める。さらにリスナー層が拡大する。素人が触れる安全な受信機が作られる。

その時々、人々が良い予感をもったものが破線で示されていて、そこに向かう止むに止まれぬ力が働く。ラジオ放送などという野望はどこにもない。アメーバーのように、外に拡張してく運動だけがそこにある。

ブロードバンドという最高の通信機があっても、実は100年後に見えるラジオにあたる何かは、まだ誰にも気づかれていない。ラジオとBBBのつばぜり合いなど、100年後の水越伸からみればカスみたいな話だろう。
 

コメント    

2005年03月01日
20:09
はらこ
YahooにしてもGoogleにしても、このmixiにしても、まず自分たちが使ってみたいというところから始まっていますよね。
なんかラジオの成立過程に似ていますね。

お金を儲けたいという欲求よりも、自分たちが使いたいって欲求の方が賛同者が集まりやすいってコトですかね?

50代の人に堀江氏の支持者が多いというのは意外でした、彼の拝金主義には拒絶感の強い世代だと思っていたのですが…
2005年03月01日
22:34
gilli
初めはちょっと反感を感じたホリエモンでしたが、あの痛々しさには少し同情を禁じ得ません。
その辺かもしれません50代の人が共感を得るのは。
もっと世渡りも上手で人心を操るのがうまい人はいくらでもいるだろうし。

ライブドア社内ではどのような人なのだろう?
それなりの求心力を発揮してるわけだから。

インターネットも携帯電話も10年前にはこんなに生活に浸透するメディアになるとはまだ思えなかったわけだけど、
100年先から俯瞰すると本当にどんなことになるのでしょうか?
2005年03月01日
22:53
なさ 飛鳥井
サルトルですか、「実存は本質に先立つ」とか、どっかに書いてあった。
学校の図書館では、河出書房新社の「世界の大思想」シリーズを眺めていたし、学校からの帰りには必ず書店に寄って思想系とか精神医学系を眺めていました。
当時から読解力がなかったので、どっちも眺めていただけで、読んでいなかった。(笑)
2005年03月01日
23:06
TODO
私の上司は産経派。私はどちらかといえばほりえもん派。30代の後輩は圧倒的にほりえもん嫌い。
話せば一様ではありません。価値観が際だつのかも。

私は産経が嫌いです。水野成夫から鹿内一族へ、そして権力奪取に成功した日枝グループ。そんな彼らが日本を考えようなんて声高に言うのが嫌いです。
2005年03月01日
23:50
はらこ
なるほど、これだけ堀江バッシングが広がると日本人特有の判官びいきが働いてくるんですかね。

ちなみに好き嫌いで言えば産経も堀江氏もどちらも嫌いです。

今回の一連の騒動に関してだけ言えば、既存株主を軽視した資金調達方法やかなり怪しい時間外取引の手法など、フジよりも堀江氏のほうに問題が多いと感じています。
今回のフジの禁じ手も、もともとは堀江氏がフジの株を希薄化するためにやるといっていた方法となんら変わらんですからね。
自分の株主としての権利は声高に主張するわりにはライブドアの一般株主には何の気遣いもない彼の態度はいかがなものかと思います。
2005年03月02日
00:10
私は、ほりえもんと、フジテレビおよび応援団の政治家一派と、どっちが嫌いかといえばよりフジテレビ側が嫌い、という感じです。団塊さんたちがほりえもん好きな気分は、なんとなくわかるというか。やはり、反体制の香りがするのでしょうか。ただ、「ほりえもん的なもの」というのも、実のところいまの政権の言うところの国策的なグローバルスタンダード化に乗ってるだけだから、体制をぶち壊すところまでは期待できそうにないと思う。
もっぱらの私の興味は、新株予約権の発行差し止めについて、裁判所がどんな根拠で、どんな判断を示すかということだけです。

そういえば、TODOさんご指摘の水野成夫さんは、親の親戚の懇意にしているお友達だったみたいで、小学校くらいの子供の頃には親に連れられて挨拶にいったりして、何度かお目にかかった記憶があります。いつもお小遣いとかお年玉をくれるので、いいおじいさんだという感覚でしかなかった。すごく偉そうだったけど、なんというか癖のない感じのするヒトだったので、あとで大人になってから、転向のことや、複雑な家庭環境などを知って、人は見かけじゃわかんないんだなあとショックでした。
その水野さんから鹿内家にフジサンケイグループの経営が移ったときにも、たぶんフジサンケイグループ内ではいろんなムズカシーことがあったと思うし、鹿内家の末路がけっこう悲惨だったのは記憶に新しい。ほりえもんも、よくあんな複雑怪奇な背景をもった企業に興味を持つもんだなあ、とちょっとふしぎではあります。
2005年03月02日
00:44
はらこ
>団塊さんたちがほりえもん好きな気分は、なんとなくわ
>かるというか。やはり、反体制の香りがするのでしょうか。

それがなんとも私には理解できない点なんですよね。

今回の争いって、あえてイデオロギー的に言えば日本型資本主義対スーパー資本主義の戦いなんで、左翼的な思想にシンパシーを感じる人がどちらかに肩入れするというのがどうしても理解できない。

噛み付いた相手がフジサンケイグループだったからなのかな?

フジが馴れ合い型の日本的資本主義を代表しているのなら、
アメリカ流のもっとドライな資本主義の立場をとっているのが堀江氏ではあるんだけど。
堀江氏のビジネススタイルは資本市場の健全性の点から疑問点が指摘できる部分も多いんですよね。だからグローバルスタンダードを支持する立場からみても問題児ではあるとおもうんですが。
2005年03月02日
00:54
gilli
その水野成夫氏の子供は元衆議院議員で、元西武百貨店社長の
水野誠一氏です。その昔、「不思議大好き」や「おいしい生活」の時代に西武の宣伝部の部長で一時代を築き、その後、 SEEDやLOFTが出来た頃に渋谷店店長をつとめ、社長になりましたが、セゾングループを離れて政治家になりました。セゾングループで堤清二さんに意見を求められる唯一の人と言われていました。
ぐぐったら、
http://www.miznos.com/
サイトセンスはさすがです。
2005年03月02日
00:54
ヒマナイヌの川井
ラジオの話おもしろいなー!
2005年03月02日
01:15
安斎利洋
>ラジオの話おもしろいなー!

どんな現代のメディアよりも、現在のメディアのことを考えさせるヒント満載の面白い研究です。

水越伸『メディアの生成―アメリカ・ラジオの動態史』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/detail/-/books/4495857711/249-2849414-2840367
2005年03月02日
01:22
はらこさん
いろいろと書いてたら、突然IEが終了してしまって、全部再現するのは難しそうなので、簡単でごめんなさい。
私は、さほど深い考えをもってるわけではないのですが、途中で元首相の森さんをはじめとした政治家の面々がフジサンケイグループを擁護したあたりから、それと対比してほりえもんが反体制的に見え出したみたいな気がします。
あの応援団は、フジサンケイグループの好感度形成には、あまり役立ってないようですね。
あとの部分は、私、積極的にほりえもんを支持してるわけではないので、なんとも。
2005年03月02日
01:38
はらこ
>途中で元首相の森さん

そりゃ、彼に味方されたら誰だって好感度下がるでしょうね(笑い)

確かにフジサンケイグループは体制色が強いので、政治家が騒げば騒ぐほど、そういう部分を意識する人が増えてしまうのかもしれませんね.

ただ、フジサンケイグループは化けの皮が剥がれちゃっているのでいいのですが、堀江氏が妙に偶像化されつつあるのが気になるんですよね。
2005年03月02日
02:03
あ っ こ
どうも日本国内の論調の様子は人気投票的な側面が目立ちます、海外経済紙(フィナンシャルタイムス他)などの論調はマーケットを静観するマーケット動向監視型の見方に加え司法の判断に興味があるようです。(日本特派員談)

私はもとより人気投票的な見方ができるほど両者を知りません。興味はマスコミが追うポイントと事実のズレであったり、とらえどころだったりします。


ラジオの話は面白いですね、
以前の仕事場はJWながしっぱなしでした。ラジオってのも意外と選択されていないのかも・・みなさんはどうなのかな?




2005年03月02日
02:19
安斎利洋
水越さんの研究が示唆的なのは、ひとつはラジオはもとももと双方向メディア、つまりインターネットワークだったという点。巨大メディアとして成立する過程で、双方向性をまずそぎ落としていく。

もうひとつは、真空管むき出しの通信機が、ラジオになる過程でマホガニーの箱をかぶり、家具化していくという点。人間に優しいコンピュータ、なんていう流れも、たいてい真空管を隠蔽して、道具の汎用性を断念することでもある。

どの話をとっても、コンピュータメディアの今と結びつかないことがない。そこがラジオの動態史の面白いところです。

汎用のプログラマブルな機械が、ブロードバンドで結合している、というこんなすごい状況を、ゲーム好きのような頭の固い変化を好まない連中のマホガニーに閉じ込めないためなら、僕はどんなヤツだろうと加担したいところだけれど、こういう話の流れを見るにつけ、どこにもわくわくするような点線が見えてきません。
2005年03月02日
04:48
あ っ こ
アメリカの映画にでてくるシーンでトラックの運ちゃんがスタンドの公衆電話に飛び込んでラジオ局へリクエストしているシーンとかありましたね。

すっごく情熱的に双方向していた時代の情景ですね。

>アメーバーのように、外に拡張してく運動だけがそこにある。

このイメージが含んでいるものは「主体」のありようってことにも大きく関わるりますよね。
メディアのアメーバ増殖とは、たとえば

「私のほしい情報」・・・・がニュースになる  とか
「私がやりたいこと」・・・が番組になる    とか

だったりすると思うので、「主体」の観客性が薄らいでいくわけですから双方向かなり鍛えられそうですね。

なんだか広い海のなかで微生物がコロニーを形成して新たな生息域を確保してゆくようなイメージですね。自ずと信頼のおける媒体が「大きな媒体」からばらされて、ほぐされて海中に拡散してゆくのかな、その辺が一番面白いところですね。
2005年03月02日
08:03
gilli
ラジオが双方向というのは、草創期においては無線電話と並行して発明がなされたからです。皆競って電波の実験施設をたてたりしたようです
2005年03月02日
09:57
安斎利洋
っていうか、アマチュア無線家が、一人で問わず語りを始めたわけです。聴き手もアマチュア無線家だから、受信機の隣には送信機が置いてあった。いつでも自分が送り手になれる。誰でもホームページが持てる、っていうのと同じです。
2005年03月02日
10:18
はらこ
>一人で問わず語りを始めたわけです

ゲームの世界でいうと、おそらくは学生が自作のゲームをASCIIやI/Oに投稿していたころがそんな時代に相当するのでしょうかね。

今のゲーム業界は、開発規模もでかいしプラットフォームベンダーの縛りも強いし、あの当時の自由な雰囲気はもう残っていない感じですね。

安斎さんが今のゲーム業界に失望するのも無理はないと思います。
2005年03月02日
17:01
gilli
あと多分20世紀のはじめあたりのアマチュア無線家が乱立してた時代はパテントや特許制度ができて、発明ブームでもあったのだと思う。奇天烈な発明品がいっぱい。そのころの新聞の広告などを集めた本が水越先生の研究室にありました。
2005年03月04日
16:00
匿名希望中・おーもり
発明や発見をする方って。

其処だけが違う視点で見れるから「閃く」だけじゃなくて。
日常から。
視点が違ったり する。
生活の不便も、自分や周囲にあるかもしれない なぁ。

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